鶴見俊輔さんは多くの知識人にとっての指針だった。朋友(ほうゆう)として交わり、後進として薫陶を受けた。 作家の大江健三郎さん(80)は「デモで歩きながら、鶴見さんにアメリカの大衆小説や漫画の話を聞くのが楽しみでした。僕は鶴見さんを通じて、アメリカの庶民文化を勉強したんです。幅が広くて、底が深いのに、決して威張ることがない。僕たちの世代がデモをすると、すっと溶け込んで下さって、若い人たちと愉快に話されるんです。上の世代と下の世代を自然に結んで下さる方。信頼して尊敬していました」と悼んだ。 僧侶で作家の瀬戸内寂聴さん(93)は「私にとって恩人です」と話す。50年近く前、大逆事件で死刑になった管野須賀子の小説(「遠い声」)を書こうとしたとき、どこの出版社も掲載を渋るなか、「うちで書いたら」と「思想の科学」に載せてくれた。 「その後も色々と相談に乗ってくれて本当に感謝している。今なお元気だったら、
安全保障関連法案の審議が来週から参院で始まる見通しとなり、他国を武力で守る集団的自衛権行使に基づく自衛隊派遣が現実味を帯びてきた。海外の現場で、隊員の安全は確保されるのか。国民の疑問が解消されない中、本紙に寄せられた自衛隊員の妻のメールなどから、苦悩する家族の姿が浮かぶ。 (中山高志) 「夫に出会った時、集団的自衛権を行使するような自衛隊だったら、結婚しなかったかもしれません」。夫が航空自衛隊員の関東地方の四十代の主婦は、メールに割り切れない思いを記した。「夫が戦死するのも、人殺しに加担するのも嫌ですから」 衆院特別委員会で法案が可決された十五日。夫の職場では「とうとう戦死者が出るな」との声も上がった。帰宅後にそう打ち明けた夫は「今までやってきた訓練が生かされる」と冷静を装った。しかし、皮肉っぽい言い方からは、本音だとは思えなかった。
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