文と写真 平民金子 ぼちぼち、子供が生まれて来る予定になっていて、相手は右も左も言葉すら理解出来ない未熟な存在なのであるが、「初対面の時に足元だけはきちんとお洒落しておこう」という気分になった。きっかけは特になく、近所のお好み焼き屋で焼酎を飲んでいた時に、とつぜん思いたったのだ。翌日になって、生まれて初めて百貨店の紳士靴売り場に行き、生まれて初めて革靴を買った。リーガル2504。それは発売されてから半世紀近くがたつ、何の装飾もない地味な黒い靴だ。昔から、履き物というのは100円で売られているイボイボのついた健康サンダルが実用的に一番だと考えていて、どこへ行くにも愛用していた身には、「革靴は最初にきつく感じるくらいの物を選んでおけば、そのうち自然と足に馴染んで履きやすくなっていきますよ」などという店員の言葉はまったくの異文化だった。 その日から、これまで締め付けられた事のない自由な足と、無骨