中国政府がこの時期、むしろ自ら積極的に日中首脳会談の開催を図ったのはなぜか。そこには江沢民時代の「負の遺産」から一刻も早く脱却し、安定した経済成長路線の実現に専念したいという胡錦濤現政権の実務路線がある。 江沢民時代の10数年は「背伸び」の時代だった、と私は考えている。 先日、本欄の「独リニア事故と上海市書記の解任の間にあるもの」でも触れたように、江沢民時代の中国は何かにつけて「世界水準」「先進国並み」「大国の威厳」といったものを過度に追求する習性が強くあった。天安門事件後の経済的苦境を克服するため、国民の意識を鼓舞しなければならなかったという事情があるのは確かだが、この行き過ぎた「背伸び」のツケが現在の中国に大きな負担となってのしかかっている。 例えば、上海のリニアモーターカーやF1サーキットは壮大な無駄遣いであったことが世間の目にも明らかになってきているし、北京オリンピックは開催決定後