<木下昌明の映画の部屋・第240回> 日本の〝いま″をとらえたドキュメンタリー〜想田和弘『港町』/原一男『ニッポン国VS泉南石綿村』 ●過疎化した漁港の日々を「観察」 想田和弘の「観察映画」が面白い。第1弾の『選挙』が2007年に評判になった。川崎市議補選で自民党から出馬する友人を自由に撮ったもので、同時に自民党の選挙の仕組みばかりか街の人々の営みにも光を当てていた。 観察映画の第7弾にあたる『港町』は、前作の『牡蠣工場(かきこうば)』と同じ岡山県の牛窓という港町が舞台。前作は中国人労働者を雇って養殖カキの殻を剝(む)く労働の日々を描いていたが、今作は、工場の内外のにぎわいから離れた静かな空き家の多い、過疎化した漁港を観察の中心にすえている。 想田映画の特徴は、観客を誘導する音楽やナレーションを排し、カメラで、「現場」に介入してそこの日常性をじっくり撮るところにある。 映画はモノクロなので