■国家信用高める外交感覚求む 「戦争で負けても外交で勝った歴史はある」とは、吉田茂が残した言葉の中でも最も有名なものの一つである。英国は、18世紀後葉に米国の独立戦争の結果、北アメリカ植民地を失ったけれども、その後の外交展開によって19世紀の隆盛の時期を迎えた。吉田は、このことを念頭に置きながら、敗戦後の日本の政治指導に携わったと伝えられる。 吉田の言葉が示唆するように、外交や安全保障といった対外関係に絡む政策では、一度の失敗が途方もない災厄を呼び寄せることがある。それは、年金、医療、介護といった「内治」の政策領域とは比べるべくもない重みを持っているのである。 そもそも、外交・安全保障政策は、前に触れた「内治」の政策とは異なり、他の国々との関係への顧慮を要請する「相手のある」政策領域である。外交・安全保障政策は、総て「自国の都合のために」手掛けるものであると考えている向きがあるかもしれない