ひとつひとつが切れ切れになっていることばが文章になると、どうして切れ目のない意味になるのか? 考えあぐねていたこの難問は、ぐうぜん琴の音を聞いたとたん、解決される。琴の音は点ではなく、線になっていたのである。ここから「修辞的残像」の仮説が生まれた。このアイディアはきわめて生産的で、次々に独創的な仮説=理論を生み出したのである。本巻は、やがて「近代読者論」や「異本論」「古典論」に発展・結実する〈外山学〉の萌芽をすべて含んでいる。これは著者の理論体系の基層をなす、記念碑的な著作と言ってもいいだろう。 「日本の修辞」は、連句の特質を中心に、外国に例のない、日本独自のレトリックを論じたものである。これを読めば、日本語は非論理的であるとは誰も思わないだろう。「ことわざの論理」は、「転石苔を生ず」など、大人の知恵のつまったことわざの意味をユーモアをまじえて説いた、お役に立つ一編である。 I 修辞的残像
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