千葉県南部で繁殖、急増しているシカ科の特定外来生物、キョン。人間に危害を加えることはない臆病な動物だが、生態系を破壊したり、農作物に被害を及ぼすことから駆除の対象になっている。しかし、その命を奪うだけではなく、有効活用しようという動きも見られる。人と野生動物が共生する未来を探る──。 「ギョーウ、ギョーウ……」 千葉県。房総半島南部のとある地域。日が落ちるとどこからともなく、聞いたことのない不気味な鳴き声が響き渡った。その声に80代の女性は眉をひそめた。 「キョンだよ。森とか空き家にいるのよ。この鳴き声、うるさいし気持ちが悪い」 動物園から逃げ出し繁殖 『キョン』とは中国や台湾にいるシカ科の小型草食獣。全長1メートル、体重は10キロ程度で中型犬程度の大きさだ。現在は東京・伊豆大島と千葉県の房総半島南部にのみ生息している。もともと日本の動物ではなく、海外から連れてこられた外来生物だ。 動物園