甘粕正彦―乱心の曠野 [著]佐野眞一[掲載]2008年7月13日[評者]唐沢俊一(作家)■“怪物化”された人物の真の姿に迫る 時代が妖気を帯びるとき、まるでその気を体現したかのような怪人物が歴史の上に登場してくる。ラスプーチンやマタ・ハリなどといった名はその時代の混沌(こんとん)の代名詞として大衆文芸作家たちが好んで筆にのせてきたものである。 甘粕正彦という名も疑いなくその一つだろう。関東大震災の混乱に乗じ、アナーキストの大杉栄・伊藤野枝(及び幼いその甥<おい>までも)を惨殺したとされる過去を持ちながら、やがて満州に渡り、その建国に陰で大きな力を発揮、そして満州映画協会(満映)の理事長に就任するや、満州の夜を支配するとまで言われた存在になる。小説や映画で、われわれはどれだけ“怪物化”された甘粕像を目にしてきたことだろうか。 本書は、そういうフィクションが形作った虚像を排し、人間としての甘粕
佐野眞一/著 サノ・シンイチ 1947(昭和22)年東京生れ。出版社勤務を経てノンフィクション作家に。主著に、民俗学者・宮本常一と渋沢敬三の交流を描いた『旅する巨人』(大宅賞)、エリートOLの夜の顔と外国人労働者の生活、裁判制度を追究した『東電OL殺人事件』、大杉栄虐殺の真相に迫り、その通説を大きく覆した『甘粕正彦 乱心の曠野』など多数。 序章 “主義者殺し” 第一章 幕末のDNA 第二章 憲兵大尉の嗚咽 第三章 鑑定書は語る 第四章 獄中の臣民 第五章 浴衣の会見記 第六章 暗鬱のルーアン 第七章 謀略人脈 第八章 満州ひとりぼっち 第九章 人は来りて見よ 第十章 満映という王国 終章 八十五年目の真実
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