俺俺 [著]星野智幸[掲載]2010年7月18日[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)■承認されたい個、全体へと融解 傑作だ。 ファストフード店で隣の男の携帯電話を手に入れた俺(おれ)は、出来心でその本人になりすまし、持ち主の母親に振り込め詐欺を行う。しかし、その母親は俺を本当の息子と思い込み、次第に俺は「その男」になっていく。この現象が徐々に拡大し、俺が果てしなく増殖する物語。 俺の職場は「メガトン」という家電量販店。俺は「メガトン」こそ自分の居場所だと思っていたが、俺が別の俺と入れ替わっても業務は回り、ただ果てしない日常が続くことに気づく。俺の存在は常に希薄で、いつでも「誰か」と代替可能な存在だ。しかも、「メガトン」には分かり合えない意地悪な上司が存在する。社内では同調圧力が強く、みんなが特定の人間をバカにすることで、ギリギリの共同性が保たれる。 俺は「メガ
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