鶴子は清掃から休憩所のある倉庫に戻ると、片山に「鈴音」三階の「もみじの部屋」前の洗面が詰まりかけていることを告げた。洗面の詰まりなどすぐに改善するのだけど、通常の仕事では、あまり発生しない仕事が入った場合、片山はジョークを言って自分を奮起させる妙な癖があった。「もみじ饅頭!」でっかと片山が言うと、鶴子は「あほか」とあきれた顔を見せた。 「鈴音」で土曜に仕事の日 「お疲れさん」 平が休憩所のある倉庫に戻ってきた。 「ボード拭きありがとうございます」 今日は平がお客様ボード拭きをやってくれたのだ。 「夏場は適当に分担してやらないとな。お互い結構、仕事の量が多いから」 平がペットボトルの水を飲みながら言った。 「そろそろ、鶴子さんトイレ清掃から戻ってくるんじゃないの。暑い、暑いっていうよ。たぶん。そうだ、片山ちゃん、明日もここに来るんだね」 平が思い出したように言った。 「ええ。明日はお客さんが