タグ

ブックマーク / musashimankun.hatenablog.com (65)

  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章10回「辛い時はジョークで笑いながら乗り越える」 - Novel life~musashimankun’s blog~

    鶴子は清掃から休憩所のある倉庫に戻ると、片山に「鈴音」三階の「もみじの部屋」前の洗面が詰まりかけていることを告げた。洗面の詰まりなどすぐに改善するのだけど、通常の仕事では、あまり発生しない仕事が入った場合、片山はジョークを言って自分を奮起させる妙な癖があった。「もみじ饅頭!」でっかと片山が言うと、鶴子は「あほか」とあきれた顔を見せた。 「鈴音」で土曜に仕事の日 「お疲れさん」 平が休憩所のある倉庫に戻ってきた。 「ボード拭きありがとうございます」 今日は平がお客様ボード拭きをやってくれたのだ。 「夏場は適当に分担してやらないとな。お互い結構、仕事の量が多いから」 平がペットボトルの水を飲みながら言った。 「そろそろ、鶴子さんトイレ清掃から戻ってくるんじゃないの。暑い、暑いっていうよ。たぶん。そうだ、片山ちゃん、明日もここに来るんだね」 平が思い出したように言った。 「ええ。明日はお客さんが

    Novel「闇が滲む朝に」第☆章10回「辛い時はジョークで笑いながら乗り越える」 - Novel life~musashimankun’s blog~
  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章9回「この宇宙の片隅で生きている 一瞬の偶然と奇跡について」 - Novel life~musashimankun’s blog~

    片山は料亭に外に出ると植栽の水撒きを始めた。カエデの木は夏でも緑の葉を青々とつけている。長いホースの先を全開にして勢いよく水を撒く。暑い空気が一瞬、涼しい風に変わる。そういえば、人間はこの水がなければ生きていけない。日は四方を海水に囲まれているが、ふと、不思議な地形をした日の、この地球の片隅で、生きている100年の一瞬の偶然を思う。 虫よけスプレーと庭掃除 片山はモップを駐車場の倉庫の奥にしまった。 「少しは涼しくなったけど、まだ暑いから気をつけてな」 平がバキュームを片付けながら言った。 「そうですね。今日は日差しも少し和らいでいますから大丈夫ですよ。当に夏場は丁度、太陽の日差しが直線的に当たるので暑さが倍増しますよ」 片山は虫除けスプレーを右腕に捲いた。 「顔も気をつけないとな」 平がジョーク混じりに笑う。 「ホント、庭に出ると顔にもたまに蚊が来ます。蚊が来る場所ではマスク付けて

    Novel「闇が滲む朝に」第☆章9回「この宇宙の片隅で生きている 一瞬の偶然と奇跡について」 - Novel life~musashimankun’s blog~
  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章8回「明日、世界が終わっても、今日、僕はリンゴの木を植える」 - Novel life~musashimankun’s blog~

    片山は「鈴音」の一階に戻ると、いつものように大きな花瓶の花に気づいた。この花瓶に入れられたバラやヒマワリなどの花や、ビルの植栽が自分に話しかけていることを感じることがあるのだ。同様に片山は元気になるリンゴが好きで毎日、べるが、きっかけは幼い頃に偶然に知った「明日、世界が滅ぶとしても、今日、リンゴの木を植える」の名言だった。 花や植栽が話しかけてくる 良子から洗面のハンディーソープ交換の件を聞いた片山は、そのまま「鈴音」の一階に戻った。一瞬、疲労からめまいを覚える。めまいは深呼吸を繰り返すうちに収まった。 「鈴音」の大きな窓から片山は空を見上げながら、もう自分がこうして都会のど真ん中で、清掃業者として生きていることになんら違和感を感じることはなかった。忙しすぎて日中は自分を振り返る余裕などないといった方がいいかも知れない。その分、疲労もたまる。 しかし、それでもふと「鈴音」の入り口に入ると

    Novel「闇が滲む朝に」第☆章8回「明日、世界が終わっても、今日、僕はリンゴの木を植える」 - Novel life~musashimankun’s blog~
  • Novel「闇が滲む朝に」第★章7回「ええいっ!危険な暑さにバッドウォーターマラソンを意識も・・」 - Novel life~musashimankun’s blog~

    片山二郎は「鈴音」の洗面の清掃を終えると料亭の外に出た。異常な暑さが襲う。最高気温が35度と発表される日が続く毎日に、重い疲労を感じる。常日頃から毎日の肉体労働生活をトレーニングと考えている片山は、こんな時にアメリカのカリフォリニアで開催されるバッドウォーターマラソンレースのことを思い出す。最高気温が40~50度と発表されるレースでは、たぶん体感的には気温55度の中を217キロを48時間以内に走るのだ。暑さに耐えきれず吐く選手もいるという。 異常な暑さが疲労に拍車をかける 片山はボード拭きを終えるとタオルを洗いに「鈴音」の外に出た。床のモップ拭きを始めた。今日はついさっきまで雨が降り続いていたから、植栽の水撒きはやらないで済む。しかし、外は既に40度を超えている。 異常な気温上昇とにわか雨は、もはやこの日は南国のようだと思う。片山は軽いめまいを覚える。しかし料亭内はクーラーが効いている。

    Novel「闇が滲む朝に」第★章7回「ええいっ!危険な暑さにバッドウォーターマラソンを意識も・・」 - Novel life~musashimankun’s blog~
  • Novel「闇が滲む朝に」第★章6回「今日も元気だしていきましょう」 - Novel life~musashimankun’s blog~

    片山二郎は「鈴音」の洗面の清掃を終えると、一階のお客の予約状況が記してあるボードをタオルで吹き始めた。そこに女将の武田良子が出勤してきた。Vネックの深緑色のTシャツに白いパンツ、カーキ色のショルダーバッグというラフな格好だ。いつも通りに挨拶すると、片山の前に香水の香りが漂った。料亭の女将というより、どこかの女性誌のモデルをしているといっても不思議ではない。ヨガが趣味で野球は詳しくはないが、イチローのファンだと、平が話していたことを片山は思い出した。 女性誌のモデルのような女将の出勤 片山二郎は二階の洗面所を終了すると、「鈴音」の入り口付近に出してある事務所内のゴミを回収し外に出た。一時間前まで降っていた雨はやんでいる。そのまま裏口に回り水道のある場所に行って清掃用具を洗い始めた。ゆっくりはしていられない。次は「鈴音」の入り口付近にあるお客の予約ボードのチェックだ。 片山はバケツからタオルを

    Novel「闇が滲む朝に」第★章6回「今日も元気だしていきましょう」 - Novel life~musashimankun’s blog~