少子高齢化が進む中で、社会保障の持続可能性について不安を持つ人々が増えているようだ。「年金は破綻する」といった論調などその最たるものであろう。僕は半世紀近く生命保険業界に身を置いてきたので補完関係にある社会保障については昔から興味があったが、この分野では信じられないようなトンデモ本が多くバランスの取れた概説書に出会った記憶があまりなかった。 社会保障は、マクロの風景(制度の全体像)とミクロの風景(私をどうしてくれるの)とが乖離しているので理解が難しいのだ。本書を読んでようやく探し求めていた良書に巡り会えた感がした。 本書は3部構成をとっている。第Ⅰ部では、ビスマルクに始まる系譜、基本哲学からわが国の社会保障制度の概要まで制度の基本が過不足なく語られる。社会保障があるからこそ、人は「思い切って飛べる」のだ。 第Ⅱ部はマクロから見た社会保障。少子高齢化に喘ぐ社会の現状、産業としてGDPの2割を