あれから随分長い時が流れた。もはや30代にさえ、あの熱き時代の出来事を何も知らない人々はいるのだろう。斜陽産業と呼ばれることに甘んじていた70年代半ばの日本映画界に現れ、驚天動地の手法で大いなる変革をもたらした異端児がいた。出版という異業種から旧態依然とした映画界に揺さぶりをかけ、若い観客に強く訴えかけた十数年。あれは、旧来のシステムに別れを告げる過渡期ゆえの現象だったのか。いや、間違いなくたった一人の男の狂気と熱情によって、暴力的なまでに巻き起こされた変革の嵐だった。 男の名は、角川春樹。ルーカスやスピルバーグが切り拓く新しいハリウッド映画に胸躍らせると同時に、我々は角川春樹の一挙一動に驚き、反発し、そして楽しんだ。その映画の出来に裏切られることも決して少なくはなかったが、メディアを総動員して浴びせかけられる大量宣伝の中に身を置き、劇場に足を運び、原作本を購読することで、日本人は同時代を
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