アートの現場が疲弊している。長時間労働、低賃金、セクハラ、非正規雇用。アーティストやアートマネージャーたちが直面している現実だ。 『日産アートアワード2017』でグランプリを受賞したアーティストの藤井光は、早くからこの問題に注目してきた。2010年には芸術労働者たちに呼びかけ、墨田区役所前広場でテントを張って座り込みを行い、『Our Strike』という映像作品としても発表している。 一方、学問的な立場から、当事者に地道な聞き取り調査を重ねてきたのが共立女子大学・准教授の吉澤弥生だ。吉澤は『若い芸術家たちの労働』と題した冊子にこれらの調査結果をまとめ、現在までに続編を含む3冊を発表している。 同じ問題意識を持ち、これまでも共闘してきた二人は、芸術労働者の現状をどう見ているのか。業界を支配する共同体の存在、自主規制、「ポスト2020」問題、ビジネスとしてのアート……、話を聞くうちに、広くクリ