気胸の治療の一つに胸腔ドレナージがあります。 胸腔ドレナージとは、胸腔内にドレナージチューブを留置して、漏れた空気を外に出して、肺がしぼむ(虚脱する)のを防ぐ治療でした。 ⇒気胸や気胸の治療法に関しては、詳しくは以下の記事もご覧ください。 この胸腔ドレナージの際に、行う処置として、胸膜癒着術があります。 胸腔内に留置したドレナージチューブを用いて、胸腔内に癒着剤(液体)を投与し、肺を胸壁とをくっつけてしまうことで、気胸の再発や気胸がおこった際に肺が虚脱することを防ぐ効果を期待します。 胸腔内に癒着剤を入れたあと、一定期間は胸腔内に薬をとどめておく必要があります。しかし、胸腔内には空気を逃がすためのドレナージチューブを留置しており、チューブが下を向いたままでは、空気と一緒にせっかく投与した癒着剤も出て行ってしまいます。 そこで行うのがつり上げ法です。 ドレナージチューブを上に向けることで、空
本日は気胸の治療に関してまとめています。 ⇒気胸ってどのような病気?という方は以下の記事もぜひ参考にしてください。 気胸の治療には大きく以下の4つの方法があります。 ①安静 ②手術 ③胸腔ドレナージ ④気管支充填術 ①安静 まず、最も重要なのが①安静です。 気胸は肺が破れてしまう病気です。そして咳などで肺に圧力がかかると起こりやすいことがわかっています。そのため、まず何よりも肺になるべく負担をかけないことが重要です。 なるべく安静にし、重いものを持たないように注意してください。また、咳がある場合には咳止めの薬(鎮咳薬)を使用したり、便秘気味であれば排便時にいきまないように下剤をすすめたりしています。 ②手術 破れてしまった肺を部分的に切除するのも有効な治療法です。 一般的に自然気胸と呼ばれる原因が不明な気胸の場合には、時に手術が有効な治療法の一つとなります。 特に若年で発症する気胸はこの自
気胸とは肺が破れて空気が胸の中(胸腔)に漏れてしまう病気です。 肺は多くの空気を取り込むことができる臓器であり、車のタイヤのように膨らんでいます。 車のタイヤであれば、破けてパンクしても、タイヤはしぼみますが、空気は大気中にもれていきます。 しかし、肺が破れてしまうと、 ①肺がしぼみ ②漏れた空気が胸の中(胸腔内)にたまって してしまいます。 胸腔は肋骨で囲まれており、一定の容積以上には膨らみませんので、漏れた空気がさらに肺を圧迫して、進行すると血圧低下に至ります(この状態を緊張性気胸といいます)。 (気胸のイメージ図) このような状態になると、胸痛や息苦しさを自覚し、急激に酸素濃度が低下してしまいます。 肺が破れて起こる病気ですので、突然発症するのが特徴です。 気胸は肺に圧力がかかると起こりやすいといわれています。 例えば、咳をしたり、重いものを持ったり、排便時にいきんだりすることで、突
2019年に全身性強皮症関連間質性肺疾患にニンテダニブ(商品名:オフェブ)が保険承認され、その根拠となったSENSCIS試験(国際共同第3相試験)の結果は説明させていただきました。 fibrosis.hatenablog.com SENSCIS試験の日本人のサブグループ解析が2021年に報告されています。 Kuwana M, et al. Nintedanib in patients with systemic sclerosis-associated interstitial lung disease: A Japanese population analysis of the SENSCIS trial. Mod Rheumatol 2021;31:141–50. ニンテダニブ群とプラセボ群との52週時点での努力性肺活量(FVC)の変化を比較していますが、結果は、 ニンテダニブ群:52
酸素の吸入を行う際、実際に体内に入る酸素濃度がどの程度か計算できます。 多くの方は、鼻カヌラ1Lだと24%、2Lだと28%と、「1L上げるごとに4%ずつ増える」と覚えているのではないでしょうか。 それはとても重要です。しかしこれを覚えているだけでは、「なぜ鼻カヌラで5L、6Lと流量を上げていくことが効率が悪いのか?」、「頻呼吸だった場合に本当にその濃度が正しいのか?」などの質問に答えることはできません。 ここでは酸素濃度の簡単な考え方を提示させていただきますので、ぜひゆっくりお読みください。 ステップ①:呼吸の時間 まず大切なのは、呼吸の時間です。 前回の「ネーザルハイフローの流量が30L/min以上なのはなぜか?」という記事でも述べさせていただきましたが、通常は1分間の呼吸数はおよそ12~16回程度といわれています。 例えば、呼吸数が15回だとすると、一回の呼吸にかける時間は4秒程度です
ついに形状認識ロボットが気管支鏡検査で導入されました。かなりの診断率にも思いますが、近い将来、実用化されるのでしょうか。ちなみにデモでは、ファミコンのコントローラーみたいなものを使用して、テレビゲームのように操作していました。 Kalchiem-Dekel O, et al. Shape-Sensing Robotic-Assisted Bronchoscopy in the Diagnosis of Pulmonary Parenchymal Lesions. Chest 2022;161:572–82. 背景 肺病変のサンプリングにおけるガイド付き気管支鏡は急速に発展している。近年,形状認識ロボット気管支鏡(ssRAB: shape-sensing robotic-assisted bronchoscopy)が導入され、従来の生検困難な病変のサンプリングを成功させる手段として注目されて
高流量鼻カヌラ酸素療法とは、一般的に「ネーザルハイフロー」と呼ばれることが多い酸素療法です。英語ではHFNC(high-flow nasal cannula)やHFNCOT(high-flow nasal cannula oxygen therapy)と記載され、コロナ禍でさらに広く用いられるようになりました。 (図. ネーザルハイフロー。N Ashraf-Kashani, BSc FRCA, R Kumar, MD FRCA DICM EDIC FFICM, High-flow nasal oxygen therapy, BJA Education, Volume 17, Issue 2, February 2017, Pages 57–62より引用掲載) 高流量鼻カヌラ酸素療法(ネーザルハイフロー)は、総流量30-60L/minの酸素と空気が混じったガスを、湿度100%まで加湿します。
間質性肺炎の診察で重要な身体所見の一つにばち指があります。指先が太鼓のばちのように丸く太く変化している所見です。 (図. ばち指の写真。Nayak HK, et al. BMJ Case Rep 2012.より引用掲載) ばち指は慢性の経過を示す所見であり、間質性肺炎や肺癌、気管支拡張症などで認めます。 2015年に日本の多施設で行われたレジストリー研究では、間質性肺炎では全体の約30%にばち指を認め、特に特発性肺線維症では3人に1人の割合で確認できました。 Bando M, et al. A prospective survey of idiopathic interstitial pneumonias in a web registry in Japan. Respir Investig 2015;53:51–9. また、COPD単独ではまれであり、COPDの患者でばち指を認めたら肺癌
2022年1月の最新のJAMAに、COVID-19の呼吸管理に対して、CPAP(持続陽圧呼吸療法)とHFNC(高流量鼻カニュラ酸素療法)とを通常酸素投与と比較した試験がイギリスから報告されました。 コロナ禍でHFNCが大いに取り上げられていますが、今一度CPAPの有用性をしっかり見直す必要があります。 Perkins GD, et al. Effect of Noninvasive Respiratory Strategies on Intubation or Mortality Among Patients With Acute Hypoxemic Respiratory Failure and COVID-19: The RECOVERY-RS Randomized Clinical Trial. JAMA 2022. 背景 2020年のイギリスで入院したCOVID-19患者約6.4万
関節リウマチに伴う間質性肺炎の最新のレビューが日本から報告されました。前回、前々回の続きで、今回が最後(第3回)になります。 Yamakawa H, et al. Decision-Making Strategy for the Treatment of Rheumatoid Arthritis-Associated Interstitial Lung Disease (RA-ILD). J Clin Med Res 2021;10. 治療戦略の提案 関節リウマチに伴う間質性肺炎では、どのような治療を行っていけばいいのか、明確に定まった方法はありません。そのような中、本レビューで治療戦略の案が提案されました。 (図. 関節リウマチに伴う間質性肺炎の治療戦略(案)。文献より引用掲載) 概要は、 まず関節リウマチの活動性を評価して、活動性が高い場合には、間質性肺炎がある場合はcsDMARDs(
今回、関節リウマチに伴う間質性肺炎の最新のレビューが日本から報告されました。前回の続きです。 Yamakawa H, et al. Decision-Making Strategy for the Treatment of Rheumatoid Arthritis-Associated Interstitial Lung Disease (RA-ILD). J Clin Med Res 2021;10. PF-ILD 関節リウマチに伴う間質性肺炎では、初めは画像所見が乏しくても、徐々に線維化が進行する一群が存在します。これらは、現在ではPF-ILDとして知られ、まさに間質性肺炎のトピックスの一つです。詳しくは以下の記事もご覧ください。 例えば、以下の画像をご覧ください。 (図. 関節リウマチに伴う間質性肺炎(RA-ILD)の画像の経過。文献より引用掲載) いずれも関節リウマチに伴う間質性肺
関節リウマチでも間質性肺炎を合併することが知られています。今回、関節リウマチに伴う間質性肺炎の最新のレビューが日本から報告されました。 Yamakawa H, et al. Decision-Making Strategy for the Treatment of Rheumatoid Arthritis-Associated Interstitial Lung Disease (RA-ILD). J Clin Med Res 2021;10. 画像パターン 過去の論文をまとめた結果では、関節リウマチに伴う間質性肺炎では通常型間質性肺炎(UIP)パターンと非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンの頻度や予後は様々であることがわかり、その診断の多彩さや難しさがわかります。 (図. 関節リウマチに伴う間質性肺炎(RA-ILD)の画像パターンと予後。文献より引用掲載) ただUIPパターンとNSIP
肺炎をきっかけに両側の肺に影が出現し重度の呼吸不全を呈することがあります。このような病態を急性呼吸窮迫症候群(ARDS; acute respiratory distress syndrome)と呼びますが、どのような臨床的な因子が予後と関連があるのか、まだあまりわかっていません。そこに言及した報告が日本から2021年に報告されました。 Ichikado K, et al. Clinical phenotypes from fatal cases of acute respiratory distress syndrome caused by pneumonia. Sci Rep 2021;11:20051. 背景 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の致死的転帰を予測する客観的な臨床的特徴や予後因子は、ベルリン定義が発表されて以来、報告されていない。 研究の目的:肺炎による致死性ARDSの2つ
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