ncode.syosetu.com タイトル 月環光の夜。 それはある冬の日のこと。月が綺麗な夜だった。月環光の輪が夜に滲んで薄青く見えた。月の光は白かった。 僕たちは中学生だった。一年会っていなかった。いつのまにか片方が十四歳になっていた。ふとしたことがきっかけで会うことになった。身長が十二センチも伸びたというのが本当かどうか。セーラー服を着ていると大人っぽく見えるというのは本当かどうか。それを確かめあうためだけに、僕と桐沢は、丸一日かけて会うことにした。それは小さな旅だったが、旅行ではなかった。一人で切符を買い、間違えずに列車に乗って、決まった駅で降り、正しい路線に乗り換えをして、約束の時間に、約束の場所で待っている。そういうごく簡単な試練を乗り越えて、僕と桐沢は再会する。僕らは二人とも、面倒くさくてロマンチックなことが好きだった。 僕は目の前の平坦で平凡なバスターミナルが蒼い世界にな