今私の手元に一冊の絵本がある。『100万回生きたねこ』と題されたその絵本は1977年に出版 され、作者は佐野洋子(谷川俊太郎氏夫人)である。最初にこの絵本を手に取る人は、その奇妙な タイトルに興味を持つだろうし、私もたぶんその一人であったと思う。学生時代、北海道を旅行して いて、偶然泊まったユースホステルのミーティングは一冊の絵本の朗読だった。その時にペアレント さんの息子の朗読で読まれたのがこの絵本である。その不思議な読後感は旅の後半の私をしばし ば放心状態にした。京都の下宿に帰ってから、書店めぐりをしてその絵本を買い求めたのはいうま でもない。 その絵本の書き出しはこうである。 「100万年もしなないねこがいました。100万回もしんで、100万回も生きたのです。りっぱなと らねこでした。100万人のひとが、そのねこをかわいがり、100万人のひとが、そのねこがしんだ ときなきました
下の『生――生存・生き方・生命』の編者を引き受けた瞬間から、彦坂諦氏の文章を巻頭に置くことに(執筆の打診もしないうちに勝手に)決めていた。はじめて読んだ彦坂氏の著作は『男性神話』で、これもたいへん面白く、影響も受けたが、決定的に魂に杭を打ち込まれたような気がしたのは、何年か前に読んだ(といってもその時は読み通さなかったのだが)『ひとはどのようにして兵となるのか(上)―ある無能兵士の軌跡 第1部』(罌粟書房、1984年)。石原吉郎、富士正晴、大岡昇平といった人たちの作品を読み解くことで、戦争や軍隊において発露される人間なるものを、薄明かりのように照らし出す。この本がいま入手困難なのはいけない。図書館で読めると思うが、もしそれも無理なら、彦坂さんも『生』の参考文献に挙げている、畑谷史代『シベリア抑留とは何だったのか――詩人・石原吉郎のみちのり』(岩波ジュニア新書)だけでも手にとってほしい。これ
エイドリアン・デズモンド,ジェイムズ・ムーア[矢野真千子・野下祥子訳] (2009年6月30日刊行,日本放送出版協会,東京,8 plates + 609 + 77 pp.,ISBN:9784140813812 → 目次|版元ページ) 【書評】※Copyright 2009 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved ダーウィンの生涯を貫く奴隷制度と人種差別への反感「進化論に隠されたメッセージ」という副題が示す通り,700ページにも達するこの評伝は,今年生誕二百年を迎えるチャールズ・ダーウィンがわれわれ人間の進化に関する研究と考察を進めた真の動機が,「反奴隷制度」と「反人種差別」というきわめて社会的な問題意識にあったことを示そうとしている.著者たちはダーウィンが生まれ育った家庭環境から振り返ることにより,彼が当時まだ続いていた奴隷制度に対してつねに反対の意
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く