2013年の4月、彼のもとで転職準備をするために、私はシリコンバレーに戻ってきた。しかしその出鼻をくじくように入国審査官が立ちふさがり、晴れやかな気分になるどころか待合室のベンチで怯えることになってしまった。パスポートを握りしめる手が汗ばむ。 無職の人間が、仕事や学校のために来たわけではなく、その上恋人の元で観光ビザでいられる3ヶ月全てを過ごすなどとおどおどした様子で言うものだから、そのままアメリカに不法滞在するのではと怪しまれてしまったのだ。口角のすっかり下がった入国審査官が彼に電話するのを、私は黙って見つめるしかなかった。 しばらく電話して入国審査官も納得したようだ。ようやく待合室から解放されてバゲッジクレームに戻ると、他の乗客はもうすっかりいなくなっていた。私のスーツケースだけがぽつんと残っているのを見て情けない気持ちでいっぱいになる。そうして重たい荷物を引きずり到着ロビーで彼を見つ