中森:二作は同時代が舞台ですが、共通して登場する人物は、実は中上健次くらいですね。今日対談しているバー・風花は最初、中上に連れてきてもらいました。『青い秋』にも書きましたが、初対面のとき、店に向かうタクシーの中で「小説を書けば、(中上が選考委員を務めていた)文學界新人賞を獲らせてやる」と迫られた。島田さんは、そういうことはありました? 島田:「新人賞を獲らせてやる」は中上が迫るときの常套手段ですが、若手作家でセクハラを受けたのは私ではなく佐伯一麦かな。僕は「島田を殴る」と言われ逃げ回っていました(笑)。 中森:しかし、中上は「島田には絶対に文学賞をやらない」と散々抑圧しておきながら、傷心で日本から逃避した島田さんをNYまで追いかけていったんだから、結局、愛していたと思う。 島田:「ちょっとLAに用事があって、ついでに立ち寄った」って。なんで、LAから六時間も飛行機に乗ってついでにNYに来る