若杉和彦 元メーカー勤務 元原子力安全委員会技術参与 1・原発事故の影響が拡大した原因は何か? 国のエネルギーと原子力政策をめぐり、日本で対立が続いている。主張される意見はいずれも国民の幸せを願ってはいるのだが、その選択は国の浮沈に関わる重大問題である。東京電力の福島第1原発事故の影響を見て選択が曇るようなことがあってはならない。しかも被害は不必要に膨らんでいる。 福島事故の影響をこれほど大きくした理由は、漏れた放射能だけではなく、事故後に採られた必要以上に厳しい安全規制であった。その背景には世論の圧力があり、その形成にマスメディアが影響した。この構造を正確に理解するべきだ。 多くの国民は、福島県だけで1700人を超える震災関連死、膨大な税金を使う除染、食品安全基準による東北農林水産業の疲弊、それらに伴って発生した風評被害から「あんな危ない原発はもういらない」と感覚的に主張する。しかし、も