はじめに 今日では誰でも、雪の結晶は下図のように美しい六方対称形であることを知っています。雪を実際に見たことのない人でも、雪印の企業商標を思い浮かべる人も多いでしょう。歴史的にみてもケプラー、デカルト、フックらの科学者をはじめとする数多くの人々を魅了し、スケッチや顕微鏡写真が残されています。しかし科学者の視点ではじめて精力的に研究を行ったのが中谷宇吉郎でした。中谷は天然雪の観測・分類から研究をはじめ、実験室で人工的に雪を作りだすことによって、その成因を明らかにしました。今回の講義では、先駆的な人工雪研究を振り返るとともに、今日的な研究課題を取り上げます。 1. 氷と雪 氷も雪もH2Oの固体であり、H2O分子が規則的に配列した結晶です。大気圧下では、結晶構造は六方晶型になることが、巨視的結晶が六方対称になる理由です。同じ結晶にもかかわらず、2つの呼び方がありますが、水蒸気が昇華・凝結したもの