絶対に、ケチをつけてはいけない料理。それは、年配の女性が煮た黒豆。そしてもう一つは、男が作るカレーです。 黒豆もカレーも、作った本人にとっては、ほとんどアイデンティティーのような役割を果たしていることが多いものです。たとえピンとこない味であっても、 「すごい、これお作りになったんですか? おいしーい!」 と、大仰なくらいにほめておいた方が、後々のため、だったりする。 酒井順子 『箸の上げ下ろし』 より 「男のカレー」 褒め言葉の中に毒がある。批判的な物言いの中に愛情がある。酒井順子のエッセイは、この語り口こそが魅力であり、どれも素晴らしい。 さて、こだわりの 《男のカレー》 を作る男の扱いにくさについて、さんざん言われっぱなしではシャクなので、僕も一言物申してみることにする。 《男のカレー》 は祝祭である。 《男のカレー》 を作るとき、彼はヒーローになる。 カレーを作れないアメリカンなお父
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