「有機農業」や「エコ」という単語を目にすると、私たちは「何かいいものである」と思いがちだ。しかし、かつてこうした農法がナチスと接近した過去を持つと聞けばどうだろうか。有機農業が称えがちな「自然」や「美しい風景」は、一歩間違えると、ナチスが推奨した「混じり気のない優秀な人間」を「自然のなかで育てる」という人種主義に接続しかねない。有機農業の発想を今後生かしていくためにも、こうした過去と向き合う必要がある。 二つの有機農業 第一次世界大戦の大量殺戮と大量破壊の傷跡から少しずつヨーロッパが復興し始めた1925年、いまなお大きな影響力をもつ二つの有機農業がインドとドイツで産声をあげた。ひとつは、インドール農法である。 インド中部のマディヤ・プラデート州のインドールという都市で、イギリスの植物学者アルバート・ハワードが体系化した農法である。化学肥料をいっさい用いず、堆肥の土壌改良力を活かす。日本を含
![エコの代名詞「有機農業」が、ナチスと深く関わった過去(藤原 辰史)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/51e6a75fc365e293a4dccd3d64fbb54926625a0f/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fgendai-m.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2Ff%2F0%2F1200m%2Fimg_f0616799ad070aa4411e144d83c038ef70762.jpg)