この話を、原稿にできるのだろうか? 取材しながら、ぐるぐると考えた。正直なところ、あまり自信がなかった。彼女の記憶は断片的だったし、決して「わかりやすい話」ではなかったからだ。 でも、それこそが彼女が連絡をくれた理由だった。父親にどんな虐待をされたのか、よく思い出せない。裕福な家庭で、父親の社会的地位も高いだけに、周囲に自分のつらい状況を見つけてもらえない。 特定の場面では話すことができなくなる場面緘黙(ばめんかんもく)や、記憶や意識をとりまとめる力が一時的に失われる解離など、彼女は複数の症状を抱えている。そのこともあり、周囲によく誤解をされてしまう。 数えきれないほどの「わかってもらえない」を繰り返した彼女は、7年ほど前、ある出来事をきっかけに精神状態を悪化させる。それから約4年、家出や入院を繰り返し、傍目に理解されやすい困難にある人に激しい嫉妬を感じて、苦しんだ。 2年前にカウンセリン
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