ここはオフィスビルの地下階。停電している。薄明るいランタンの光の輪だけが行く先を照らしている。出口はどこだかわからない。しかも、自分一人ではない。ここには得体の知れない化け物がいるのだ。ランタンの光を案内板に向ける。そこにはSB-132研究室と書かれている。すると、ヘッドセットに通信が入った。「待って。そこで止まって。廊下を右方向に進んで、最後を左よ」廊下を進むが、方向感覚を失ってしまった。彼女は、最初を左と言ったのだったか、最後を左と言ったのだったか、思い出せない。うなり声が近づいてくる。これは「Fear Sphere(恐怖の球体)」というタイトルのゲームだ。光の輪は、ランタンに仕込まれたピコプロジェクターが投影する映像。6軸加速度センサーによって、照らす方向が検知されている。 真っ暗な球体の中で、プレイヤーに見えるのは、その光の輪の中の映像だけ。暗闇を懐中電灯で照らすのと同じ感覚だ。自