磯田:だから受験は苦労しました。僕が知っていることと、受験で問われることに齟齬があるわけですから。最初は京都府立大学に入ったんです。京都に行けば古墳や史跡が見られると思って。入学後、速水融という慶応義塾大学の先生が、数量経済史という歴史学をやっていることを知ったんです。江戸時代の乳幼児の死亡率とか、平均寿命とか、女性の平均結婚年齢の地域ごとの比較とか、そういった数字を出す研究です。これはおもしろいと思いまして。この国の歴史学は思想ばかりを追いすぎている、普通の民衆の生活の数字を見る歴史学を学びたいと思って、大学の単位を取りつつ、歴史の本を読みつつ、再び受験勉強をして慶応大学に移ったんです。 林:すごいです。 磯田:苦労しましたよ。僕、大学に入ったときには先生と同じぐらい古文書が読めましたけど、そんなのは受験じゃ問われないですからね(笑)。 林:慶応に入ってすぐ、図書館で勉強しすぎて倒れちゃ