競技場に、細長い布の両端を持った男女のペアが十数組立っている。合図とともに、会場にキツネが放たれる。怯えたキツネは競技場を走り回り、やがて布を踏む。その瞬間、男女は力を合わせて布を引っ張り、キツネを宙に飛ばす。繰り返し空に投げられるキツネたちは当然のごとく怪我をしていくが、誰も手当などしない。そして競技が終了に近づくと、参加者は弱ったキツネを憐れみながら撲殺していく――。 以上が、本書のタイトルにもなっている「キツネ潰し」ゲームである。中世ドイツやポーランドでは為政者が王宮の中庭や庭園で開催するほどのメジャーな娯楽であった。この遊びに熱中していたポーランド王のアウグスト2世は、たった一回の大会で、キツネ687匹、ノウサギ533匹、アナグマ34匹、ヤマネコ21匹を殺害した。 18世紀出版の古書にて、この「キツネ潰し」の記述と挿絵を偶然にも発見し興味を引かれた著者は、歴史の彼方にある喪われしス