石井隆の“名美物語”を久々に観てからというもの、ここのところ心地よい呪縛に捕われている。 我ながら呆れるのは、新作の某サスペンス・スリラーを観ていても、主人公の女性と彼女を慕う男との関係性や、そのふたりのラストシーンに名美の世界を当てはめていたこと。分かるひとには分かってもらえるプロットなのだ………。 当地の映画館では「人が人を愛することのどうしようもなさ」の上映が4週目に入った。石井隆作品としては嬉しいロングランになるのだが、配給の東映サイドの要求がいつまでも『花と蛇』路線だとしたら何とも哀しい。 今回の喜多嶋舞の熱演に水を注す気は毛頭ないのだが、ヒットを支える観客の目的が、『花と蛇』路線だけとは思いたくないのだ。石井隆映画の代名詞が『花と蛇』路線だけでは寂し過ぎる。若いファンには『GONIN』や『黒の天使シリーズ』のアクションを求める声が多いようだけど、それも良し。ただ、いつまでも緊縛