夜遅くにひっそりと公開されている映画の中に、こういう鮮烈な輝きを発見した時の喜びというのは、映画ファンにとって何物にも代えがたいものがある。まして、それを同志に吹聴出来る至福をや。 映画は次のような字幕から始まる。「2010年5月、『オトシモノ』『ロスト☆マイウェイ』などの作品でしられる映画監督ふるさわたけしの新作がクランクインした」 監督名が平仮名で表記される以外は事実である。古澤健監督の新作は、ふるさわ監督が撮る新作のメーキング映像という偽りの体裁を装う。虚実の皮膜を狙った手法は珍しくはないが、描写に現実味があって思わず引き込まれる。 前半は、ふるさわの尊大かつ小心なキャラクターに笑わされる。モテないのに女が大好き。言ってることは深遠そうだが、やってることは裏腹で卑しい。そんな男を古澤自身が、これは地ではないかと思わせるほど好演している。 ふるさわは街で見つけたゆかり(藤代さや