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  • ジョージ・オーウェル『1984年』を山形浩生訳で読んだら驚くほど面白かった

    有名だけど退屈な小説の代表格は、『一九八四年』だ。全体主義による監視社会を描いたディストピア小説として有名なやつ。 2017年、ドナルド・トランプが大統領に就任した際にベストセラーになったので、ご存知の方も多いだろう。「党」が全てを独裁し、嘘と憎しみとプロパガンダをふりまく国家が、現実と異なる発表を 「もう一つの事実(alternative facts)」 と強弁した大統領側近と重なったからかもしれぬ。 『一九八四年』は、学生の頃にハヤカワ文庫で読んだことがある。「ディストピア小説の傑作」という文句に惹かれたのだが、面白いという印象はなかった。 主人公のウィンストンは優柔不断で、あれこれグルグル考えているだけで、自ら行動を起こすというよりも、周囲の状況に流され、成り行きで選んでゆく。高尚な信念というより下半身の欲求に従っているように見える。 「党」を体現する人物との対話も、やたら小難しく何

    ジョージ・オーウェル『1984年』を山形浩生訳で読んだら驚くほど面白かった
  • この本がスゴい!2022: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    「いつか読もう」はいつまでも読まない。 「あとで読む」は後で読まない。 積読をこじらせ、「積読も読書のうち」と開き直るのも虚しい。人生は有限であり、が読める時間は、残りの人生よりもっと少ない。「いつか」「そのうち」と言ってるうちに人生が暮れる。 だから「いま」読む。 10分でいい、1ページだっていい。できないなら、「そういう出会いだった」というだけだ。「いま」読まないなら、「いつか」「そのうち」もない。 に限らず情報が多すぎるとか、まとまった時間が取れないとか、疲れて集中できないとごまかすのは止めろ。新刊を「新しい」というだけの理由で読むな。積読は悪ではないが、自分への嘘であることを自覚せよ。「いま」読むためにどうしたらいいか考えろ。「」にこだわらず読まずに済む方法(レジュメ、論文、Audible)を探せ。難解&長大なら分割してルーティン化しろ。こちとら遊びで読書してるんだから、仕事

    この本がスゴい!2022: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
    aoiyotsuba
    aoiyotsuba 2022/12/01
    一冊目にkashmir さんが出て来て「おっ」てなった。
  • 「コペンハーゲン解釈」「多世界解釈」だけではない、量子力学の解釈を10個にまとめてみた『量子力学の諸解釈』

    「コペンハーゲン解釈」「多世界解釈」だけではない、量子力学の解釈を10個にまとめてみた『量子力学の諸解釈』 混迷する物理学が面白い。 原子や電子といった小さなスケールで世界を考えるとき、常識が通用しなくなっている。観察対象には実体があって、位置や速度を持っているという、当たり前のことが成立しなくなっている。 例えば、電子は粒子でありながら波でもある現象について。二重スリットを通過する電子は、干渉しあった波のような縞模様が出てくる。一方で、電子を一つずつ発射すると、粒子のように観測される。しかし、継続していくと、波のような干渉縞になる(粒子波動二重性)。 あるいは、観測によって、電子の振る舞いが劇的に変わる、波動関数の収縮について。スクリーン上の一点の電子を観測する実験を、波動関数の変化とする。電子を観測する前だとシュレーディンガー方程式に従って存在するが、ひとたび観測すると、従わなくなる。

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  • 「みんな違って みんないい」が蔓延した世界

    「みんな違って みんないい」という一節は、金子みすゞの詩「私と小鳥と鈴と」にある。1996年より小学国語の教科書に掲載され、「正しさは人それぞれ」「価値観の多様化」といった言葉がトレンドになる。 正義の反対はまた別の正義であり、絶対的な正しさなんて存在しない―――相対主義と呼ばれるこの考え方、現代の「新常識」とみなす人も多いだろう。 これに疑問を呈したのが書だ。 「みんな違って みんないい」という言葉は、確かに他者を認め、多様性を尊重しているように見える。実際、こうした言葉は善意から生じた文脈で用いられている。 しかし、この言葉は安易に広められ、世間に蔓延しているという。単なる趣味の違い程度なら、「互いの価値観を認め合う」のはよいかもしれぬ。だが、エネルギー施策における原発の扱いや、社会保障制度の見直しといった、大勢を巻き込み、利害が対立する場合はどうなるのか。 この場合、現実として、権

    「みんな違って みんないい」が蔓延した世界
  • 「ローマ人の物語」を歴史の専門家はどう評価しているのか?

    「ローマ人の物語」を10倍楽しく読む方法シリーズっ(実は続いている)。 「ローマ人」ツッコミどころ多すぎー、塩野節がイイ感じを醸しだしているんだけど、調子っぱずれなトコは耳に障る。「面白ければ、それでいい」というスタンスでヘンなところは嘲笑(わら)って読み流してる。 しかし、物語のくせに「これこそ事実だ」的な断言口調や、根拠レスで歴史家をけちょんけちょんに貶すのはいかがなものかと―― 心配するのは余計なお世話? 【問】 歴史の専門家は、「ローマ人の物語」をどのように評価しているのか? あるいは黙殺しているのか? それとも目の敵にしているのかね? ここでいう専門家とは、学術的な権威の裏付けを持つ人で、一般に教授とか呼ばれている人々。図書館のレファレンスサービスで調べてもらったのだが、クリティカルな回答を得られたので紹介する。カンタンに言うと、【答】 黙って言わせときゃいい気になって!「聞き捨

    「ローマ人の物語」を歴史の専門家はどう評価しているのか?
  • 幻の名著「キミにもできるスーパーエリートの受験術」を読む

    幻の受験「キミにもできるスーパーエリートの受験術」を読んだ。amazonでは常に品切れ、ときどきYahooオークションで出品されるものの、目のタマが飛び出るような価格がついている(確認した限りでは6万円 !! もちろんそんな金なんて出せるはずもない。わたしが入手した方法は末尾で明かす)。 結論から言うと、たしかにスゴいだ。これを知っているのと知らないのとでは、大きく違うかも。大学受験をターゲットとしており、日で受けるあらゆる「試験」に効くだろう。タイトルがアレだけれども、「エリート」向けではないなぁ… むしろフツーの学生さんがうっかり手にすると「賢者の書」あるいは「魔道の書」になりかねない。1994年に出ているが、長い間幻の名著とされていたのも頷ける。 ―― ただし、「ドラゴン桜」まで。そのものじゃねーか、と何度ツッコんだことか。てっきり、「ドラゴン桜」の種は「『親力』で決まる !

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  • この本がスゴい!2021

    「後で読む」は、あとで読まない。 「後で読む」は、あとで読まない。 「試験が終わったら」「今度の連休に」「年末年始は」と言い訳して、結局読まなかった。「定年になったら読書三昧」も嘘になるだろう。そもそも、コロナ禍で増えた一人の時間、読書に充てたか?(反語) だから「いま」読む。 たとえ一頁でも一行でも、目の前の一冊に向き合う。いま元気でも、一週間後には、読めなくなるかもしれないから。 今年は、死を意識した一年でもあった。「やりたいこと」を先延ばしにしてるうちに、感染して望みが断たれる可能性が爆上がりした。 時の経つのは早い。人生が長いほど、一年は短くなる。体感時間は加速する一方、人生の可処分時間は、短くなる。 だから「いま」読む。 積読を自嘲したりマウント取るのもヤメだ。いま読まない理由を並べ立てて開き直る不毛も捨てよう。そして、ずっと取っておいた、とっておきのを、いま読む。 そんなつも

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  • 書けない悩み4人前『ライティングの哲学』

    書けない。 最初の一行に呻吟し、次の段落で懊悩し、そこから先が続かない。あるいは、言葉が詰まって出てこない。「これじゃない」言葉ばかり並んでいる。支離滅裂の構成で、書いても書いても終わらない。 そんな悩みを抱えた4人が集まって、お互いの「書けない」病をさらけ出す。学者、文筆家、編集者と、書くことが仕事みたいな人なのに、書けない悩みを打ち明ける。 「書けない」ことへの生々しい告白の中で、まるで私のために誂えたような手法や、まさに今、自分が実践しているやり方が紹介されている。 書かずに書く 千葉雅也さんが喝破してたこれ、まさに私が今やっている 「ファイル」→「新規作成」で、新しい白いページを表示させ、そこに一行目から書き出す……なんて執筆は、しない。そんなことすると、白いワニが来る(by 江口寿史)。 書かずに書く、って禅問答みたいだけど、言い換えるなら、「書く」というプロセスが始まった時点で

    書けない悩み4人前『ライティングの哲学』
  • 単純化した構造で歴史を語る危うさ『グローバル・ヒストリー』

    「開国」という言葉に違和感がある。 なぜなら、江戸時代は鎖国をしていたというが、オランダや中国、朝鮮や琉球、アイヌと交易を行っていたからだ。近代化に向けた啓蒙のニュアンスを感じるからだ。 確かに、鎖国方針の停止は大きな転換点だ。しかし、普通にあった西洋以外との交易を無視して、欧米との交易開始を、「国を開く」と強調することにもやっとしている。 ドイツ歴史学者・ゼバスティアン・コンラートによると、この「開国」というレトリックは、日だけでなく、中国、朝鮮にも適用されているという。西洋以外とのつながりを無視し、欧米との関係の開始を際立たせるために用いられる表現になる。 コンラートは同様に、「国民」「革命」「社会」といった概念に注意を向ける。あまりに馴染んでしまっているので普通に見えるが、これらは、ヨーロッパの局地的な経験を、普遍的な理論として他の地域に押し付けるための用語になるという。 ヨーロ

    単純化した構造で歴史を語る危うさ『グローバル・ヒストリー』
  • 文明と穀物の深い関係『反穀物の人類史』

    人類は、狩猟採集から農耕牧畜へと進歩した。 穀物による安定した糧生産が人々の健康を増進し、余暇を生み、文字や文明を育んでいった。文明を狙う野蛮人は、狩猟採集のままの生活で、文字を持たぬ遅れた未開の人々だった。 ……と思っている? だったら『反穀物の人類史』をお薦めする。 著者はジェームズ・C・スコット、イェール大学の人類学部教授だ。メソポタミア、秦・漢、エジプト、ギリシア、ローマなど、文明の初期状態を検証することで、わたしが刷り込まれてきた「常識」に疑義を投げかける。 狩猟採集の方が豊かだった まず、農耕社会が豊かだったというのは誤りだということが分かる。少なくとも、初期の農業は酷いもので、反対に豊かで多様性に富んでいたのは狩猟採集の人々になる。 その証拠として、残されている農民の骨格を、同時期に近隣で暮らしていた狩猟採集民と比較する。 すると、狩猟採集民の身長が、平均で5センチ以上も高

    文明と穀物の深い関係『反穀物の人類史』
  • 「科学」と「正義」を混同すると、たいてい地獄ができあがる『禍いの科学』

    アヘン、マーガリン、優生学、ロボトミーなど、科学的に正しかった禍(わざわ)いが、7章にわたって紹介されている。あたりまえだった「常識」を揺るがせにくる。 ヒトラーの優生学 たとえば、アドルフ・ヒトラーの優生学。 劣悪な人種を排除すれば、ドイツを「純化」できると信じ、ユダヤ人を虐殺したことはあまりにも有名だ。 だが、ガス室へ送り込まれたのは、ユダヤ人だけではない。うつ病、知的障害、てんかん、同性愛者など、医者が「生きるに値しない」と選別した人々が、収容所に送り込まれ、積極的に安楽死させられていった(『ナチスドイツと障害者「安楽死」計画』が詳しい)。 『禍いの科学』によると、ナチスの優生学は、ヒトラー自身が編み出したものではないという。出所は、『偉大な人種の消滅』という一冊ので、ヒトラーが読みふけり、「このは、私にとっての聖書だ」とまで述べたという。 『偉大な人種の消滅』はマディソン・グラ

    「科学」と「正義」を混同すると、たいてい地獄ができあがる『禍いの科学』
  • なぜバカは無敵で世の中に蔓延しているのか分かる『バカの研究』

    桃井かおり「世の中、バカが多くて疲れません?」から30年、バカはどんどん増えている。 バカは、激しく自己主張する。 感情的にわめきたて、他人の意見に聞く耳を持たない。ことが起きるたびに「ほら、私が言った通りだろ?」と叫ぶ。思い通りにならないと、全て人にせいにして、自分が間違っている可能性を考えない。自分を高く評価するあまり、客観的な判断ができない。 バカは、「間違えたら死ぬ病」にかかっている。 自分の間違いを、絶対に認めようとしない。自分の間違いが証明されそうになると、ゴールポストを動かす。都合の悪いことを完全に忘れる能力があり、「昔は良かったが、今はダメだ」を口癖とする。 「バカ=知識がない」ではない。 知識はあり、アカデミックな立場にいるにもかかわらず、信じがたい愚かな発言を繰り返すバカは、大量にいる。しかも、なまじ知識があるぶん厄介だ。自分のイデオロギーを裏付ける文献を引用しながら、

    なぜバカは無敵で世の中に蔓延しているのか分かる『バカの研究』
  • 変えられないものをスルーして、変えられるものだけに集中する

    人生で一番大事なことは、イチローから学んだ。 コントロールできることと、コントロールできないことに分ける。そして、コントロールできないことには関心を持たない。 首位打者争いをしているとき、ライバル打者について話題が及ぶと、「相手の打率は、僕にはコントロールできません、意識することはありません」と打ち切ったという。 同じことを、ヤンキース時代の松井秀喜も語っていた。成績が振るわず、マスコミに批判されたことについて質問されると、「記事はコントロールできません。気にしても仕方ないことは気にしません」と返したという[松井、イチローの言葉を就活に生かす]。 初めてこの言葉を聞いた時、自分を苦しめているものがはっきりと見え、すっと楽になった。以後、手帳の見返しに書きつけ、毎日見返している。 わたしを苦しめているものは、「コントロールできないもの」を生み出しては抱えている、わたし自身なのだ。 もっと踏み

    変えられないものをスルーして、変えられるものだけに集中する
  • 『独学大全』はこう使う

    独学の達人である読書猿が書いた、独学の百科事典。「読書猿って誰?」という人がいたら、[読書猿Classic]を見に行くべし。 787ページ、1kgは、ほぼ鈍器で、そこらの教養芸人を蹴散らすのにピッタリ。 だが、隅々まで読むのは時間がかかる。独学する人は何らかの「学びたいこと」を抱えており、それにまつわる様々な問題を解決したいが故に書を手にするのだから、全読している時間が惜しいかもしれぬ。 そんな人のために書の使い方を紹介するとともに、『独学大全』が、私をどのように変えたか、さらに、どのように使っていくかを書く。 『独学大全』で最初に読むところ 『独学大全』でどう変わるか 『独学大全』をこう使う 1. 『独学大全』で最初に読むところ もちろん始めから読むのが一番だが、てっとり早く掴みたい、という方のために、p.33~39に「書の構成と取説」がある。この6ページを読むだけで使い方が分かる

    『独学大全』はこう使う
  • 「美しさ」のサイエンス『美の起源』

    多くの方が、直感で式①を選ぶだろう。正解だ。 式①の[オイラーの等式]が、世界で一番美しいとされる。ちなみに、式②の[ラマヌジャンの無限級数]は、最も醜いとされる数式だという。 最も美しい数式を探す実験は、認知科学者のセミール・ゼキが行った。 まずゼキは、fMRI装置を用いて、美しいと感じている人の脳の活性化している部位を特定した。美しい絵画を鑑賞する人の脳のうち、眼窩前頭皮質が活性化するという(*1) 。眼窩前頭皮質は、ちょうど眼球のソケットにあたる箇所に接している部分になる。 次にゼキは、数学者の協力を得て、多くの数式の中から、最も美しいと感じるものを選んでもらい、そのときの眼窩前頭皮質の状態を測定した。予想通り、美しい数式を見るとき、この部分の活性化が認められたという(*2)。数学的な美しさは、シンプルさなのかと考えると、興味深い。 問題:次の①と②のうち、どちらが美しいと評価される

    「美しさ」のサイエンス『美の起源』
  • 『わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる』という本を書いた

    心を揺さぶり、頭にガツンとらわせ、世界の解像度を上げるは、確かにある。 読前と読後で自分を一変させる、すごい(スゴ)だ。から得られた知は、行動を変え、習慣を変え、人生を変える。これホント、なぜならわたしの身に起きたことだから。そんな「人生を変える運命の一冊」は、実は何冊もある。 このブログは、そうしたを中心に紹介してきた。これに加え、どのように探し、どう読み、何を得て、どんな行動につなげたかをにした。タイトルはブログと同じ、『わたしが知らないスゴは、 きっとあなたが読んでいる』だ。 ここには、あなたにとっての「運命の一冊」を見つける方法を書いた。あなただけのスゴと出会うパーフェクトガイドだ。3行でまとめると、こんな感じ。 を探すのではなく、人を探す方法 お財布に優しく(ここ重要)、スゴに出会い、見合い、結婚する方法 (良書なのは分かってるのに、なかなか読めない)運命の

    『わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる』という本を書いた
  • 宇宙の果てから素粒子の奥への旅『ズームイン・ユニバース』

    極大の世界で「果てしない宇宙」というが、観測可能な宇宙には果てがある。それは、ここから1027m先になる。これより向こうは、観測できないため、あるとかないとか分からない。ゼロを並べるとこうだ。 1,000,000,000,000,000,000,000,000,000m いっぽう、極小の世界だと、人類の想像の限界のサイズになる。それは、10-35m)の「場」に満ちた世界になる。これより奥は、理論で説明できる範囲外となる。ゼロを並べるとこうだ。 100,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000 分の1m 「いま・ここ」から究極にまで遠ざかった場所から、限りなく近づいた世界まで、極大~極小を一冊にまとめたのが書だ。ページを開くと、宇宙の果てから出発し、1/10ずつスケールダウンしながら、近づいてゆく。 極大から極小への旅 最初は、すごいスピードだ

    宇宙の果てから素粒子の奥への旅『ズームイン・ユニバース』
  • おかしな議論にごまかされないための『論証のルールブック』

    『論証のルールブック』は、簡潔で説得力のある文章を書くためのルールが、50にまとめられている。1つのルールに1つの例文、1つの解説という構成で、このそのものが簡潔さを目指している。 ごく基的な常識レベルのものから、見落としがちな盲点まで、まんべんなく網羅されているのがいい。いくつか紹介する。 主張には根拠が必要だ 数字は他のエビデンスと同じような検証が必要だ 長文の論証や、口頭で伝える際、サインポストを活用する 論点先取の見抜き方 「主張には根拠が必要だ」なんて、当たり前すぎて、なにを今さらと感じるかもしれない。確かにその通りだろう。だが、実際に、事実のフリをした意見や、根拠レスの主張に出会ったとき、即座に見抜けるだろうか。 たとえば、この主張なんてどうだろう。 聖書に神は存在すると書かれているから、神は存在する 聖書は神が書かれたのだから、正しい これは、結論が前提に含まれた有名な例

    おかしな議論にごまかされないための『論証のルールブック』
  • ナチスのデザイン『独裁者のデザイン』

    アラームが鳴ったものは、後になって、ニュースを装ったプロパガンダだったり、意見誘導のために歪められた情報であることが判明することが多い。100%ではないものの、おおむね信頼できる。 アラームが鳴るものと、そうでないもの。この違いは何だろう? うまく言語化できなかったが、『独裁者のデザイン』にあった。 書は、ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東といった独裁者に焦点を当て、プロパガンダを駆使してどのように大衆を躍らせ、抑圧していったかを、デザインの観点から見直したものだ。 独裁者のイメージ戦略 デザインそのものには、右や左といった政治色や、善や悪などの道徳的な属性は存在しない。デザインとは、あくまで図案であり設計であり道具といったニュートラルな存在である。 しかし、デザインを利用する側の姿勢によっては、「謀る」という意味も発生するという。デザインは、人の心を一定の方向に動かし、奮い立た

    ナチスのデザイン『独裁者のデザイン』
  • ミスが全くない仕事を目標にすると、ミスが報告されなくなる『測りすぎ』

    たとえば天下りマネージャーがやってきて、今度のプロジェクトでバグを撲滅すると言い出す。 そのため、バグを出したプログラマやベンダーはペナルティを課すと宣言する。そして、バグ管理簿を毎週チェックし始める。 すると、期待通りバグは出てこなくなる。代わりに「インシデント管理簿」が作成され、そこで不具合の解析や改修調整をするようになる。「バグ管理簿」に記載されるのは、ドキュメントの誤字脱字など無害なものになる。天下りの馬鹿マネージャーに出て行ってもらうまで。 天下りマネージャーが馬鹿なのは、なぜバグを管理するかを理解していないからだ。 なぜバグを管理するかというと、テストが想定通り進んでいて、品質を担保されているか測るためだ。沢山テストされてるならバグは出やすいし、熟知しているプログラマならバグは出にくい(反対に、テスト項目は消化しているのに、バグが出ないと、テストの品質を疑ってみる)。バグの出具

    ミスが全くない仕事を目標にすると、ミスが報告されなくなる『測りすぎ』