一斤のパンの人が辞めてから、その後にやってきたのがヤマニシであったが、私はその間にもうひとりくらい、派遣の人が来ていたような気もする。もしそういう人がいたとするなら、その人はおそらくは3日以上は勤めているはずで、そうじゃないとパンの人の記録を下回るから、記憶に残るはずだ。インパクトの薄さで行くなら、2週間か3週間は勤めなければならず、逆に1ヶ月を過ぎれば、派遣期間を満了するから、そういうのも記憶に残るはずなのだ。 しかしどうして私はこう、ぐずぐずと、ヤマニシの話を先延ばしにしようとするのか。ヤマニシの前の人など、やはりいない。ヤマニシは紺色の三菱の軽自動車でやってきて、誰が教えたわけでもないのに、一番建物から遠くのフェンス沿いに車を停めた。会社は上空から見た敷地は、大雑把に言うと三角の形をしている。だからヤマニシの車は建物から見ると斜めに停められている。建物、と言うと、まるで私は2階か3階