暑さが続くと、涼し気な秋の夜が懐かしい。雨が続くと、月が恋しくなる。夜の縁側に座って月を仰ぎ、虫たちの声を聴くのは、ずいぶん昔からのお気に入り。それでも不思議なもので、子どもの頃、夜空でてらてらと光っていた月よりも、大人になったいまのそれがどんよりして見えるのは、空気のせいなのか、現在地の緯度が関係しているのか、それとも年を重ねて目が悪くなったからなのか、わからない。 小学生のときのことだ。両親に無理をいって、学研の「科学」という本を毎月買ってもらっていた。買って、というよりもこの本は、学研のおばさんという配達専門の人がいて、毎月、家まで届けてくれるのである。 発売日になると、おばさんが来るのが楽しみで、学校から帰るとずっと、当時飼っていた犬のタロの小屋の脇で、時折タロの頭に手ぬぐいを頬っかぶりさせ、ゲラゲラと笑ったりしながら、おばさんが来るのを待っていた。 何年生のときのことだか忘れたが