10月、大学は後期に入った。この前期と夏休みの前半は、まさに「当て字」に捧げた5か月間だった。 間もなく上梓される『当て字・当て読み 漢字表現辞典』(三省堂)は、当初は薄く小さな本にするつもりだった。しかし、際限ない広がりを見せる用例を、容赦なく削除していったのだが、それでも割愛にためらうことも多く、結局は900ページを超える厚みをもつ一冊となってしまった。小説や歌謡曲、漫画、雑誌、WEBなどで日々作りだされており、元より完璧を期すことの困難な対象ではあるが、何とかそこまで中身を拡げられたのは多くの方々の助力の賜物であり、それを辞書の形式に整えられたのは担当の方々の良心的にして献身的な編集のお陰であった。 「当て字」は、世上でよく使われる語だけに、意味が実に多様であってとらえにくい。日常でも、「そんなの当て字だよ」と評される場面があるように、マイナスイメージを与えられがちだ。しかし、実は「