鈴置 高史 韓国観察者 元日本経済新聞記者。1995~96年ハーバード大学日米関係プログラム研究員、2006年イースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。02年度ボーン・上田記念国際記者賞。 この著者の記事を見る
マクドナルドの苦戦が続いている。2月下旬の週末、横浜市内にあるマクドナルドの大型店を訪れたところ、昼時にもかかわらず、客はまばらで店員の方が多いほど。週末の郊外型の店舗では、こうした光景が珍しくなくなった。 なぜマクドナルドから、客が離れたのか。大きな影響を与えているのが、言うまでもなく「チキン問題」だ。2014年7月、チキンの加工を委託している中国の工場が、使用期限切れの鶏肉を使用していたことが発覚した。 日本マクドナルドホールディングス(HD)の同月の既存店売上高は、前年同月に比べて17%減少。さらに、今年に入って、日本全国の店舗で、「ビニールの切れ端」などの異物混入が発覚したことが、追い打ちをかけた。同社が発表した今年1月の既存店売上高は39%減と、2001年の上場以来、最大の落ち込みとなり、2月以降も回復の兆しは見えていない。 チキン問題と異物混入が引き金となったのは間違いないが、
韓国で「対日強硬策を見直すべきだ」との意見が出てきた。いくら「慰安婦」と叫んでも、日本から無視されたら打つ手がないことに気づいたからだ。 歴史カードを手放そう 韓国で「対日新思考外交」の主張が始まった、とのことでしたが(「『アサヒ』が駄目なら『クワタ』がある」参照)。 鈴置:保守論壇の大御所で、朝鮮日報顧問の金大中(キム・デジュン)氏が「のどが乾いた方が井戸を掘れ」(2014年12月9日、韓国語)を書きました。 これが「新思考外交」――日本との外交に歴史を持ち込むのはやめよう――を訴える代表的な記事です。以下が記事の最後の文章の全訳です。 今さらの話だが、日本との過去を言挙げし、歴史を話すことがどれほど愚かで無意味かを悟った。 韓国の外交的な武器である「歴史カード」を手放そう、ということですね。なぜ突然、そんな意見が出てきたのでしょうか。 鈴置:金大中顧問は記事の冒頭で「日本は韓国との関係
(前回から読む) 「激動の引き金は南の通貨危機か、北の核実験」――。木村幹・神戸大学大学院教授と展開を読む(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。 「ルビコン河を泳ぐ」自覚 鈴置:韓国の「離米従中」は、もう韓国人も否定しなくなりました。韓国の日常生活やネット空間では、それを前提に会話が交わされています。政府はまだ「韓米離間を図るため、日本がそんなウソを言って回っているだけだ」と、言い張っていますが。 木村幹(きむら・かん) 神戸大学大学院・国際協力研究科教授、法学博士(京都大学)。1966年大阪府生まれ、京都大学大学院法学研究科博士前期課程修了。専攻は比較政治学、朝鮮半島地域研究。政治的指導者の人物像や時代状況から韓国という国と韓国人を読み解いて見せる。受賞作は『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(ミネルヴァ書房、第13回アジア・太平洋賞特別賞受賞)と『韓国における「権威主義的」体
韓国はなぜ、法治国家を目指さないのだろうか――。京都府立大学の岡本隆司准教授に聞いた(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。 法治が性に合わない韓国人 「儒教国家では法は重視されない」という岡本先生のご指摘に膝を打ちました。記事のその部分に感銘を受けた読者も多かったのです。 鈴置:「『米国の上着』と『中国の下着』をまとう韓国人」で紹介したご意見のことです。 産経新聞の前のソウル支局長が韓国の検察に起訴されました。朝鮮日報を引用した記事が、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の名誉を棄損と見なされたのです。ところが“原典”の朝鮮日報にはおとがめなし。 要は「産経は日頃、韓国の悪口を言っている不快な新聞だからやっつけろ」という感情を露わにした起訴だったのです。しかし、韓国の法曹界――例えば、弁護士団体はこの、法の恣意的な適用に何の疑問も呈しませんでした(「北朝鮮にどんどん似てきた韓国」参照)。 4月
米中双方から「どっちに付くのか」と迫られる韓国。ついに、国論が分裂し始めた。 韓国を疑い続けた米国 米国と韓国が「戦時の作戦統制権」の返還を無期延期すると聞きました。「統制権」とは聞き慣れない言葉です。 鈴置:韓国軍は米軍が指揮しています。その状態を指して「韓国は自国の軍の作戦統制権を米軍に委ねている」と表現します。 1950年に朝鮮戦争が勃発した時、韓国軍は極めて脆弱でした。このため韓国は国連軍に統制権を渡し、その指揮下で戦ったのです。戦争が終わった後も国連軍、後に米軍が韓国軍の統制権を握り続けました。 韓国軍の力不足は続きましたし、米国が韓国という国を信用しなかったためでもあります。米国は李承晩(イ・スンマン 1948-1960年)、朴正煕(パク・チョンヒ 1963―1979年)の両政権が軍事力で北を統一する野望を持っていると見なしていました。 韓国軍を掌握しておかないと勝手に戦争を始
遙から 事情があって、ホテルを泊まりめぐっている。それも著名ホテルばかり。海外から日本に進出し勝負を挑む都会派ホテル。同じ進出組でも、もうすっかり土地に根を下ろした感のある老舗ホテル。日本国中知らない人がいないほどあっちこっちにあるチェーンホテル。最高1泊6万円までした。私個人的にはかなり勇気のいる挑戦だ。 そこで発見したことを書いてみたい。 どれも著名ホテルだが、勝負、明暗、がはっきりついていた。その個性により客層も分かれている。マーケットの住み分けがあれば同じ地域でも共存可能とわかった。ただそんな中でどういうホテルが勝ち、どういうホテルが負けるか。すでに崩壊の音が聞こえるホテルもある。「ああ、このホテルはもうダメだな」というホテルと、「だからこのホテルは根を下ろせたんだ」というホテルの差を、あくまで客的視点で書きたい。 まずは「ダメだな」というホテルから…。 USBメモリーからプリント
候補がひしめく日本 ノーベル物理学賞を日本人3名が受賞した直後、筆者は10月8日に発表されたノーベル化学賞の選考にも大変期待を寄せていた。残念ながら今年の化学賞の女神は日本に向かって微笑まなかったが、特に2000年以降は複数の日本人が化学賞を受賞している。 事実、米トムソン・ロイターが毎年発表している予測にも、多くの日本の発明と日本人の名前が化学賞にはリストアップされてきた。その中には、「光触媒」や「リチウムイオン電池」も含まれているのだが、その発明者達とは20年以上の交流が続いていることもあって、殊更応援している次第である。 光触媒の原型は1967年の「本多・藤嶋効果」に遡るが、日本からの発信は世界の注目を浴びた。二酸化チタン電極と白金電極を用いて、二酸化チタン側に光を照射すると水が分解されて、二酸化チタン側から酸素が、白金側から水素が発生する原理の発見であった。その延長上に、現在の光触
「日本は人権侵害国家だ」と世界中を訴えて回る韓国。だが、今度は自分が「言論弾圧国家」と見なされてしまった。 空白の7時間 産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長が韓国の検察から「大統領に対する名誉棄損」で起訴されました。 鈴置:肩書は前支局長ですが帰任の辞令が出たばかりで、まだソウルに滞在中です。出国禁止処分にあっていますから、在宅起訴とはいえ抑留状態です。 8月3日にネット版で書いた「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」が情報通信網法の名誉棄損に当たるとされました。 4月16日に旅客船「セウォル」号が沈没し、死者・行方不明者は300人を超えました。事故発生当初の7時間ほどの間、大統領がどこにいたのか、どう報告を受け、どう指示したかが韓国では政治問題化しました。正確に言えば、それらを青瓦台(大統領府)がなかなか明かさなかったことも問題になったのです。 朝鮮日報のシニア記
香港では、民主派による市街地占拠デモが継続している。 日々刻々と状況が変化しているので、この原稿が公開される時点でどのような状況になっているか予測することは難しい。だから、ここに最新動向を書こうとは思わない。 また、欧米系メディアを中心として、17歳にしてデモ隊の精神的支柱になりつつある黄之鋒さんの卓越したリーダーシップについて書かれた記事も散見する。その現実に立脚しつつも情熱的で人の心を揺さぶる言葉には魅了されずにはいられない。私も短い時間だったが彼にも話を聞くことができた。だが残念ながら、これまで世に出た彼に関する数多の記事を超える情報を手にできたわけではないし、彼の足跡にも触れたよい記事がほかにある。これも他稿に任せよう。 学生たちが、解決が困難と思われる政治的な課題に対して、冷静な判断と強い忍耐によって行動を起こしているその現場を目の当たりにすると、否応なく心動かされる。私たち日本
風向きが変わった A:近著『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』を読みました。他人の国のことを、よく調べたものだと感心しました。鈴置さんの言う「離米従中」に関しては、私も大筋で同感です。 ただ最近、韓国で風向きが変わり「米国サイドに戻ろう」という空気が濃くなってきたことを見落とすべきではないと思います。 鈴置:朴槿恵大統領の中国ベッタリが怖くなった、ということですね。 A:その通りです。「『三面楚歌』にようやく気づいた韓国」で鈴置さんも指摘していますが、韓国の言論人が一斉に「中国一辺倒をやめよう」と言い出したのです。 7月初めの中韓首脳会談がきっかけでした。朴槿恵大統領が訪韓した習近平主席と一緒になって日本の集団的自衛権の行使容認を批判したため、中国陣営に走っていると米国に見なされたからです。 すべて日本が悪い 鈴置:中国好きの朴槿恵大統領の意を迎えようと「これからは中国の時代だ。米国や日
痛ましい事件が起きた。 はじめにお断りしておくが、当欄では「神戸で小学校1年生の女の子が殺害された」という以上の細かい内容については触れない。 私は、この種の事件について、踏み込んだり、分け入ったり、えぐり出したり、警鐘を鳴らしたり、再発の防止を訴えたり、「あなたのすぐそばにもほら」とか言って注意を促すタイプの報道を好まない。ついでに申せば、殺害の手法や、凶器の使い方や、遺体処理の手順や、遺棄に至る事情や、運搬方法や梱包のディテールについて、いちいちCGやら図面を使って、迫真の再現描写を展開する必要があるのかどうかについても、強い疑問を抱いている。 もちろん、真相を究明することは大切なことだ。 報道にたずさわる人間にとっては、犯行の詳細を知ることが、すべてに優先するミッションでもあるのだろう。 とはいえ、取材して、究明して、真相を知ることと、その知り得た事実を読者なり視聴者なりに伝えること
韓国が対米関係の悪化を心配し始めた。急速な中国接近によって同盟国から疑いの目で見られていることを、やっと自覚したのだ。 変わり身早い「現代の両班」たち 前回は、米中等距離外交を主張していた論壇の大物が、自説を取り下げ「やはり米国が大事だ」と言い始めた、という話でした。たった1年強の間の変化です。変わり身の早さには驚きました。 鈴置:「二股外交」の勧進元、朝鮮日報の金大中(キム・デジュン)顧問のことですね。この人だけではありません。 中国の重要性を説き「米国一辺倒では駄目だ」と主張していた人たちが、相次いで「中国一辺倒を見直そう」と言い出しました。 中央日報の金永煕(キム・ヨンヒ)国際問題大記者は7月11日に「習近平式『中国の夢』を警戒する」(日本語版)を書きました。骨子は以下です。 ヘビとウサギ 韓中の蜜月を警戒する人は現在の韓中関係を、大きな青大将がウサギの腰に巻きついている姿と同じと皮
米韓同盟が揺れる。共通の敵が消え始めたからだ。そもそも同盟を支える価値観も、韓国人のそれは米国人よりも中国人と近いのだ。 矛盾拡大はここ数年 「米韓の仮想敵は今や完全に食い違う。いつまで同盟が続くのか分からない」――という前回の指摘は「目からウロコ」でした。 鈴置:多くの人からそう言われました。韓国の主敵は北朝鮮であって絶対に中国ではない。それどころか中国は、韓国にとって経済的にも、北朝鮮の軍事行動を抑えるにも頼りになる、極めて大事な友好国なのです。 一方、米国の主敵は中国であって北朝鮮では決してない。だから米中対立が先鋭化するほどに米韓同盟は揺れます。 よく考えればそうなのです。では、なぜ我々は気がつかなかったのでしょうか。 鈴置:ほんの数年前まで、米中対立がこれほどには深まってはいなかったからでしょう。米中がそれなりの関係の間は、米韓の主敵が異なるという矛盾は表面化しにくい。 加えて、
矢野:そうですか。 店舗の中で、居場所と体の動きを検知できるセンサを従業員が身に着けて、来店したお客様にも買い物の間だけ身に着けてもらい、毎秒20回ずつひたすらデータを取り続けるわけですが、それを解析した人工知能コンピュータがすごく意外な影響要因をはじき出した。 店内のいくつかの「ある特定の場所」に従業員が「いる」だけで顧客単価が向上するというんですね。そこでの滞在時間を1.7倍にしただけで顧客単価が15%も増えたとか。でもそれがどういう理由なのか言葉ではうまく説明できない。これは、具体的にはどういうことをコンピュータでやっているんですか。 矢野:ごく単純に言うと、1人のお客さんがいくらお金を使うかという売り上げというマクロな量に対して、影響を与えるかもしれない要因はものすごくたくさんあります。そのたくさんの要因の中で、影響がありそうな候補を何千個、何万個と自動で作り出し、かつそれらを絞り
7月29日は土用の丑の日だった。土用丑にはウナギを食べると決めて約20年。それをずっと守ってきたが、今年に限って取材が立て込んでランチの時間が取れなかった。ついに連続記録も途絶えるかと残念に思いながら、東京・秋葉原で取材を終えてトボトボと帰る道すがら、ふいに「美味しいウナギはいかがですか~」というアニメ調の女性の声が耳に飛び込んできた。 振り向くと、メイド服を着た若い女性と目が合った。そして、彼女の頭上にあったのは「すき家」の看板。吸い込まれるように入った店舗で食べた799円(税込み)の「うな丼並盛」は、ことのほか美味しく感じられた。 過酷で違法性の強い労働実態が明らかに その2日後の7月31日のことだ。すき家を傘下に持つゼンショーホールディングスは第三者委員会が調査報告書を提出したことを受けて、都内ホテルで会見を開いた。過重労働の実態が明らかになった同社は、外部の専門家に改善提言を求めて
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