宝塚に転居して一年,近隣の目もくらむ自然格差・文化格差に愕然たる思いだ。 宝塚は神戸・六甲山系の東山麓。かつては美しい里山・田園地帯であったのだろうが,容赦ない宅地開発で,いまや醜怪な現代都市に変貌している。 以前の比較的余裕のあった邸宅が相続で売却されると,跡地は分割され,3~4軒のマッチ箱住宅が建つ。あるいは,わがアパートのような,貧相な墓石型集合住宅となる。 このような新興住宅住民には,豊かな自然や文化は無縁だ。働き,食い,寝るだけ。貴族主義者のハンナ・アーレントは,「労働」を必然と消費に隷従する最下級の人間行為と喝破したが,私のような庶民アパート住民には,反論のしようもない。 かつて高度成長以前の日本社会では,そうではなかった。人々の多くは貧しかったが,下町でも農村でも時間はあふれ,様々な趣味や遊び,つまり多様な文化が栄えていた。美しい自然と多様な文化は,日本を訪れた外国人を痛く感