2010/11/26 異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖支配 トビー・グリーン 小林朋則 訳 中央公論新社 2010年9月25日 (上北沢図書館よ借り受け) 異端審問というと多少知っているような気がしていたが、少なくともスペイン・ポルトガルの異端審問についてはまったく無知であったことが、本書を読んで判明した。単に史実を並べただけのものではなく、はっきりした主張と知見のある良書。 著者が膨大な資料の山を整理して伝えたかったことは、おおよそ次のようなことだろう。(1)スペイン・ポルトガルの異端審問は、単にキリスト教教義の異端を取り締まるというのではなく、当時最大の版図を誇っていた巨大帝国の支配権を維持する方策として機能していた。異端審問所はローマ教皇庁(カトリック)ではなく、スペイン王の直轄下にあり、まさに権力および権力乱用の歴史を反映している。 (2)迫害の対象はほとんど異文