仏教は突き詰めれば,宗教ではないという考え方がある。 確かに,仏教では人が歩む「道」については説くが,神による啓示や救済についてを説くことはない。そもそも仏教にはブッダ(悟りを開いた者)はいても神はいない。神という存在を自分の身体の外,世界のどこかに実在すると考え,神の恩寵と罰を説くセム的一神教(ユダヤ教,キリスト教,イスラム教)と仏教との根本的な違いはここにある。 考えてみれば当然である。一切が「空」であるとする仏教が神の存在を認めるわけがない。従って,仏教にはゴータマ・シッダールタ(ブッダ)が説く「道」についての教えはあっても,神はいない。神にささげる経典もない。 だから,ゴータマ・シッダールタの死後,彼自身が神(仏)として崇拝の対象となっていったという事実は,彼にとっては甚だ不本意であることだろう。ちなみに,この点のみを考えれば,孔子が開いたとされる儒教も宗教ではないと言える。儒教も