タグ

ブックマーク / takekuma.cocolog-nifty.com (10)

  • W・マッケイ(完)パイオニアとは何か: たけくまメモ

    「パイオニアはすべてをやる」。これは昔、尊敬する西岡文彦さん(版画家・美術評論家)から聞いて、感銘を受けた言葉だ。 まず始めにモチベーションがなければならない。コママンガでいえば「絵で物語ること」、またアニメなら「絵を動かしたい」という素朴な動機でよい。ともかくこれは、ジャンルの成立に先駆けて内在している必要がある。 そこにハードウェアが発明される。マンガでいえば絵を大量印刷する技術の確立が最初にあり、次いでメディア(新聞)の発展があった。そこに誰かがフキダシやコマを組み合わせれば、絵で物語を紡ぐことができることに気が付いたのだろう。ここでのフキダシやコマは一種のOSである。記述の形式ができて、ようやく内容(ソフト)の出番となる。 もっとも思考の順序としてはそうなるが、実際には、新しいものが始まるときには一気にすべてが起こることが多い。マンガも映画も19世紀の最後の十年で基技術が確立し、

    atyks
    atyks 2012/11/20
  • W・マッケイ(5)世界最初の怪獣映画: たけくまメモ

    大作『沈みゆくルシタニア号』のあと、マッケイは手間のかかるペーパーアニメをやめ、セルアニメに切り替えた。初めての格的セル作品は『ケンタウルス』(1919頃/部分のみ現存)ではないかと思われる。『ケンタウルス』は、その存在こそ知られていたものの、永らく幻の作品となっていた。ネガが紛失し、プリントも失われていたと思われていたのだ。 ところが近年になって、ある倉庫にフィルムが眠っていたのが発見された。しかし保存状態が悪く、缶を開けたとたんにフィルムの大半が粉となって飛び散ったという。フィルムが癒着し固形化していたうえに衝撃を与えてしまったこと、そして半世紀ぶりに急激な外気にさらされたことによる悲劇であった。 現存する『ケンタウルス』は、残ったフィルムを注意深く修復したものだ。断片なのでおよそ2分ほどしか残っておらず、ストーリーはよくわからないが、若いケンタウルスの男女とその子供、そして年老いた

    atyks
    atyks 2012/11/20
  • W・マッケイ(4)沈みゆくルシタニア号: たけくまメモ

    『沈みゆくルシタニア号』(1918)は、それまでのマッケイ・アニメとは異なり、背景が静止画となっている。ここから考えて、部分的に切り抜き法やセル方式も採用されているようである。だが主要な動画部分は、変わらず紙アニメの手法が使われている。セルでは、マッケイの求める微細なタッチが表現できないからであろう。 マッケイは、これをマンガではなく「実写」として観客に見られることを望んだ。したがって作画は徹底した写実的描写に貫かれている。彼はこのわずか9分30秒の作品のために、私財を投じ、丸3年の月日をかけたのだ。 こと作画の労力という点において、筆者はこの作品以上のものを知らない。それはすべての画面が細密なペン画で描かれているのであり、しかも1コマ打ちのフル・アニメーションとして動くのだ。数名のスタッフが雇われたとはいえ、この作品に込められたマッケイの執念はすでに狂気の域に達しているといえよう。 また

    atyks
    atyks 2012/11/20
  • W・マッケイ(3)恐竜ガーティ現る: たけくまメモ

    アニメ版『リトル・ニモ』を発表した翌年、マッケイは『蚊はいかにして行動するか』(1912)を制作した。ここで彼は2つの試みに挑戦する。ひとつは作品に簡単なストーリーを与えることであり、もうひとつは「背景」を描くことであった。 前者はともかく、後者にはかなりの技術的困難が予想された。それというのも、この時期はまだセルが発明されておらず、背景とキャラをすべて一枚の紙に描かなければならなかったからだ(セルの発明は1915年)。数千枚も描くとなると、これにかかる手間は想像を絶しよう。またどんなに正確にトレースしたとしても描線に揺らぎが生じるので、完成したフィルムでは静止すべき背景がビリビリと振動してしまう。 背景とともに一枚の紙に動画を描く手法は、我が国では戦前「稿画式」または「推敲法」と呼ばれた(アニメ史研究家・津堅信之氏のご教授による)。現在でも「紙(ペーパー)アニメ」と称されて、自主アニメや

    atyks
    atyks 2012/11/20
  • W・マッケイ(2)これが95年前のアニメだ!: たけくまメモ

    Winsor Mccay: Master Edition マッケイがアニメ制作に着手したのは、遅くとも1910年の夏で、10月には最初の作品『リトル・ニモ』が完成していた。処女作の編はわずか2分強であり、彼の人気作品『夢の国のリトル・ニモ』のキャラクターが使われている。ストーリーのない、動きとメタモルフォーゼのみで構成されたテスト・フィルムだ。 記録では、マッケイは一ヶ月で4000枚の原画を描いたとされるが、2分強ではフルの1コマ撮りでも3000枚弱であり、計算が合わない。実際の作品はこれより1分ほど長かったのかもしれない。 公開年は翌1911年で、編が短すぎるため約8分の「メイキング」が添えられている。それはまず酒場にマッケイ人とそのマンガ家仲間が登場し、お互いに賭けをするという有名なシーンから始まる。 賭けの内容は「絵を、あたかも生けるがごとくに動かすことができるか」というものだ

    atyks
    atyks 2012/11/20
  • W・マッケイとアニメーションの始原(1): たけくまメモ

    ウィンザー・ゼニス・マッケイ(Winsor Zenas McCay)はアメリカン・コミック史における最初の、そしておそらくは最大の天才である。代表作『夢の国のリトル・ニモ』(Little Nemo in SlumberLand,1905~14)は、その圧倒的な美しさと幻想的なイマジネーションで、百年前の作品であるにもかかわらず、今もなお、世界中の読者とクリエイターに衝撃を与え続けている。 マッケイはまた、史上最初期のアニメーターでもあった。1910年に完成した第一作『リトル・ニモ』(公開は翌'11年)は、ストーリーもなく、自作のキャラクターをただ動かしただけの実験作であるが、その端正な作画と優雅なアニメート、華麗なイマジネーションはすでに完璧の域に達している。まさにこれは、アニメーション百年の幕開けを言祝(ことほ)ぐにふさわしい、奇跡の映像といえるだろう。 マッケイは1871年ミシガン州の

    atyks
    atyks 2012/11/20
  • それでも出版社が「生き残る」としたら: たけくまメモ

    http://www.apple.com/jp/ipad/ ↑appleiPad」公式 ついに噂のiPadの全貌が公開されて、ネットもマスコミも上を下への大騒ぎであります。ここに来て、すでに報道されているアマゾンのKindleをはじめ「電子出版」を普及させるための役者(インフラとデバイス)が出揃った感があります。日ではまだ普及以前の段階ですが、昨今の出版不況を脱出するための突破口は、もはや電子出版しかないというのは、衆目の一致するところではないでしょうか。 さて、かねてから電子出版による「個人出版支援」に力を入れているアマゾンやアップル、ソニー(の米国法人)といった企業は、自社と出版契約を結んだ著者に対して、「印税35%を支払うぞ、いやうちは50%支払う、それならうちは70%だ」という具合に、「印税率競争」をヒートアップさせて著者を引き込もうとしています。日では印税率は通常8~10%

  • 竹熊君、“紙”はもう、ダメだよ…(後編): たけくまメモ

    これから紹介する話は、ごく最近、知人のA君と俺が交わした会話をまとめたものです。登場する人物名はすべてアルファベット表記(イニシャルとは限りません)ないしは記号表記にし、意図的にぼかしている記述がありますが、話の大意はこの通りで、特に金額の数字についてはA君の発言のままにしてあります。 A君は俺と同世代ですが、学生時代にライターデビューし、現在は小さい編集プロダクションの営業と経営に徹しています。社員は社長であるA君と、奥さんのみ。しかし、最近まで常時3~40人のライター・エディター・デザイナー(すべてフリー)を抱えていて、A君が営業をかけて出版社からもらってきたムックや単行仕事を、その都度自分の抱えるフリーから4~5人選んでチームを組んで、丸々一冊を1~3ヶ月かけて編集・制作していました。こうした請負仕事(その中にはA君の企画もあります)を彼の会社では常時、8~10冊は抱えていたので

  • 携帯コミックって読んでます?: たけくまメモ

    いきなりですが、皆さんは携帯コミックって読んでますか? 俺はどんなものか確認するために数回アクセスしてダウンロードしただけで、あんまり読んでいません。俺の周りのマンガ好きに聞いても、熱心に読んでいるという人はほとんどいない。俺と同じで、何回か試しに読んでみただけで、それっきりという人が大多数です。 学校でマンガ好きの学生に聞いてみると、さすがに携帯そのものの所有率は100パーセントなんですけど、携帯コミックを日常的に読んでいるという人にはまだ会ったことがありません。きちんと統計をとったわけではないので実態はまだわかりませんけどね。とにかく世代を問わず、マンガ好きな人は当然のように雑誌や単行で読むので、携帯で読もうという人はあんまりいないのだという印象があります。 ところが、プロの編集者の間では、どうも事情が異なるのですよ。最近は結構、プロ編集と顔を合わせると携帯コミックの話題になることが

  • ネット書店とリアル書店: たけくまメモ

    えーと、日が『サルまん』の正式発売日であります。なんだかここしばらく、秋葉原での「IKKI」スク水表紙完売にはじまり、『サルまん』の当ブログからの予約注文が昨日の時点で530冊を超えるなど、派手な話が続きましたのでうっかりしてましたが、 リアル書店ではこれから ですのでよろしくお願いしたいと思います。 「裏日工業新聞」のタニグチリウイチさんの8月29日付け日記によると、彼は『サルまん』が売り切れるといけないと思い、昨日の朝一番に池袋ジュンク堂に駆け込んだら意外にすいていてサイン会の整理券番号が8番だったと、なんだ全然買えるではないか、みたいなことを書かれていました。 http://www.asahi-net.or.jp/~WF9R-TNGC/nikko.html しかし、今日が正式発売日ですので、現時点で売り切れたらそのほうが異常です。 俺を含めてけっこう勘違いした人がいると思いますが

  • 1