「私は、保守を自任していますが、いまの自衛隊はさすがにマズい。このままでは、将来の司令官たる将官の卵たちの頭の中が、〈ネトウヨ思想〉に汚染されてしまいます」 人目をはばかり、取材班を自宅に招き入れた防衛省の中堅幹部(背広組)は、深刻な表情で言った。はたして、ネット右翼に思想があるのかどうかは疑わしいが、中堅幹部から聞かされた自衛隊の〈将校教育〉の現状は、危険なものだった。 始まりは2016年6月、海上自衛隊の幹部学校(以下、海幹校)に、1人の女性がやってきたことだった――。彼女の名は、吉木誉絵(31歳)。古事記アーティストなる肩書で佐久弥レイという芸名も持っている。 なぜ、彼女が海上自衛隊の幹部を育成する海幹校へやってきたのか。それは彼女が、海上自衛隊・幹部学校の〈客員研究員〉に就任したからだった。この一報を受けて、最初に疑念の声を上げたのは、防衛省・防衛政策局・調査課の若手だったという。