2022年秋、英国の首相に就任したリズ・トラス氏が打ち出した経済対策が市場の厳しい洗礼を浴び、英史上で最短の在任49日で退陣に追い込まれた。財源の裏付けがない大型減税で財政が一段と悪化し、歴史的な物価高に歯止めが利かなくなるとの懸念が強まったためだ。あれから1年。岸田文雄政権は新たな経済対策として、所得税を含む減税の検討に入った。先進国で最悪の財政状況の日本は、英国の失敗を教訓にできるか。(時事通信 財政取材チーム) 【写真】衆院本会議で答弁する岸田文雄首相 ◇「バラマキ」が引き金に 所得税減税、法人税増税計画の凍結、エネルギー料金の負担軽減策。発足間もないトラス英政権が昨年9月にバラマキ色の強い経済対策を発表すると、英国の通貨、株式、国債が同時に売られる異例の「トリプル安」が起きた。長期的な成長をもたらす規制改革や資金繰りについて信頼できる計画を示さないまま、大型減税の即時断行を目指した