世界に先駆け1987年に脱原発を決めたイタリアは、国内4カ所の原発すべてを90年までに停止し、現在も廃炉作業が続く。そんな中、イタリア政府は2023年9月、原発新設のための議論を開始した。気候変動対策やエネルギー危機を背景にした動きだが、「廃炉先進国」であるイタリアの原発回帰は、順調に進むのだろうか。 かつての原子炉建屋の最上階に上ると、ドーム状の天井が見えた。廃炉による解体物は撤去され、広い空間が広がる。「ここには燃料プールや使用済み核燃料がありました」。99年に廃炉管理のために設立された国営の原発管理会社「SOGIN」で放射線防護を担当するサブリナ・ロマーニ氏が説明する。 イタリア北部、カオルソ原発。70年代に建設が始まり、81年12月に運転を開始した。860メガワットの出力は国内最大で、イタリアのエネルギー供給を担う沸騰水型の最新鋭炉として期待を集めた。だが5年後の86年に旧ソ連(現