メダルも大いに期待されたスポーツクライミング女子複合で波紋を呼んだあるシーン。決勝進出選手中で最も背が低い森秋彩が、高く設定された最初のホールドをなかなかつかめなかったのだ。試合以前の問題では、という声もあがったが、森本人はあくまでも毅然と……。
メダルも大いに期待されたスポーツクライミング女子複合で波紋を呼んだあるシーン。決勝進出選手中で最も背が低い森秋彩が、高く設定された最初のホールドをなかなかつかめなかったのだ。試合以前の問題では、という声もあがったが、森本人はあくまでも毅然と……。
バットの芯で捉えた“いい角度”の打球が空中で失速し、フェンス手前で外野手のグラブに収まる――熱心なプロ野球ファンなら、今季どこかでそんなシーンを目撃した記憶があるのではないだろうか。 異例の事態「ホームランが消えている」 6月14日の試合を終えた時点で、セ・リーグの平均打率は.235、1球団あたりの1試合平均得点は3.02。同パ・リーグの平均打率は.240、平均得点は3.22と、近年まれに見る“投高打低”だった昨季をも下回る超低水準となっている。打率3割を超える打者はヤクルトのサンタナ(.319)、ソフトバンクの近藤健介(.341)、日本ハムの田宮裕涼(.335)と、セ・パを合わせて3名しかいない。 さらに深刻なのが「野球の華」とされるホームランの減少だ。過去半世紀の記録を遡ると、規定の反発係数(※打球の飛距離を左右するボールの跳ね返りやすさ)を満たしていない“違反球”が使用された2011
日本バレーボール協会の新ブランド発表イベントにトークショウのメンバーとして参加したときのこと、川合俊一日本バレーボール協会会長から興味深いことを聞いた。 「高校生の男子バレーボール部は増えています。逆に女子のバレーボール部は減っているのが課題です」 ほぅ。これは興味深いことを聞いた。早速、部活動の活動実態を調べようと、 「全国高等学校体育連盟 加盟・登録状況」 というページを開いてみた。 これが興味深い。年度ごとに加盟校の数、登録者数(選手のことだね)が発表されている。 今回は2013年と2023年の状況を比較し、過去10年間でどんな変化が起きているかを調べてみた。すると…… ■男子バレーボール部 2013年 2750校 2023年 2756校 ■女子バレーボール部 2013年 4029校 2023年 3689校 男子は微増、女子は8.4パーセントほど減少しているのだ。 もちろん、少子化の
モニターの前でひたすら脳を焦がす日々の果てに、20歳の初戴冠から常に頂上に在り続けた男は、40歳を前に「九段」となった。勝利のみを追ってきた“リアリスト”渡辺明が語る、自らと、盤上の行く末について。 発売中のNumber1085号掲載の[独占インタビュー]渡辺明「僕と、将棋のこれから」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】 ――名人位を失った晩、Twitterで、19年ぶりに無冠になったことに対する心境と、ファンへの感謝を綴っていました。あれは相当に考えて書かれたのでしょうね。 「どうだったんですかね。何時ぐらいに書いたのか、ちょっと覚えていません。主催新聞社の取材を断ってしまったので、なんかコメントぐらい出さなきゃまずいかなと思ったんです。まあ、自分で書けば一番間違いがないですから」 ――そのあとはどう過ごしたとか、覚えています
スポーツマンシップがいま現在問われている もう一点、高校野球の価値として挙げられるのが、スポーツマンシップを身に付けることです。読者の皆さんにも耳なじみのある言葉で、多くの方が、スポーツマンが身に付けるべき態度という認識を持っているかもしれませんが、実際にはそれだけではありません。スポーツマンシップには、人間としての基本的な在り方という意味合いがあり、特にスポーツにおいてそれを身に付けやすいと言えます。 以前、指導者としてスポーツマンシップについて学ぶ機会があり、その価値観に深く共感しました。相手、ルール、審判を「尊重」し、敬意を持って接する。「勇気」を持っていろいろなプレーに挑戦し、強い相手にチャレンジしていく。どんな結果になろうとも、「覚悟」を持って、きちんとそれを受け入れる。こうしたことがスポーツマンシップだと認識するようになりました。 特に負けたときが重要で、そうした難しい状況でこ
青春の押し付け問題 大人が選手を自分好みのストーリーに当てはめようとする、いわば、青春の押し付け問題。これも高校野球が抱える、そして解決していかなければならない大きな課題の一つです。高校野球はシンプルに言えば、高校生がただ野球をやっているだけですが、真夏の風物詩やお祭りのように捉えている人が多く、もはや非常に巨大なエンターテインメントとなっています。新たなヒーローの出現や感動的なゲームを望むファンがいて、また、それを売り込んでいこうとするメディアの存在もある。そこで過剰に膨らまされたドラマに、それを望むファンが喜んで食いつく。こうした土壌が高校野球にはあると思います。 そしてそれを支えているのが、春と夏の全国大会が公共放送で全試合生中継され、その面白さを全国民レベルで共有できてしまうところなのです。一部からは「試合が面白いのだから、いまのままでいいじゃないか」という意見も聞かれますが、それ
米国では意外にも、いまだにWBCの話題がスポーツメディアで頻繁に取り上げられている。日本でも侍戦士はスポットライトを浴びることが多いが、米国も日本に負けないくらい、いや、もしかしたら日本以上というくらい、WBCの話題を耳にする。スポーツテレビやラジオ、ポッドキャストやネット記事、あらゆるメディアでWBCはまだ終わっていないかのようだ。 メジャー開幕後も…米で減らないWBC報道 エンゼルスのマイク・トラウト外野手が米野球専門テレビ局MLBネットワークで、3月のWBCを振り返っていた。開幕からすでに3週間が経った4月19日、「ベースボール・トゥナイト」という情報番組でのことだ。 「信じられない体験だった。あんな感覚、初めてだった。スタンドのファンの声がとてつもなく大きくて、最高の雰囲気で……。決勝戦では僕が星条旗、ショウヘイが日の丸を持って入場したけれど、あれは本当に、特別な瞬間だった」
球春到来とばかりにMLBのキャンプが始まった2日後、通算197勝の大物左腕クレイトン・カーショー投手(ドジャース)が、WBCアメリカ代表を辞退することが決まった。出場を心待ちにしていた左腕の辞退の理由は、怪我ではない。出場にあたって、保険会社が保険のカバーを認めなかったためだ。カーショーは「苛立つ。出たい選手がもっと出やすいようにすべきだ」と言葉を残した。 ロサンゼルス・タイムスの名物記者で、日本野球にも精通しているコラムニストのディラン・ヘルナンデス氏は、同紙で「書類の手続きでスター選手が出場を禁じられるなら、WBCは(サッカーの)ワールドカップになれない」というタイトルのコラムを掲載した。カーショーに直接取材し、WBCについて考察するヘルナンデス氏に、アメリカ本土のWBCに対する温度感や、今回のアメリカ代表に有力選手が集まった背景、保険の問題などを聞いた。 米国記者の嘆き「大会に値段を
2023年に開業する「エスコンフィールド北海道」のファウルゾーンの一部が規定を満たさず狭くなっている問題で、日本ハムは11月14日の12球団代表者会議で非を認めて謝罪し、2023年オフから基準を満たすため2年がかりで改修工事を行う計画案を提示した。代表者会議ではこれを了承、来季はファウルゾーンが狭いままで公式戦を実施することを承認した。 これでようやく日本ハムは規格外の新球場で来年の開業を迎え、公式戦を行うことができるようになったわけである。 いわゆる大人の解決というヤツだった。 改めてこの問題を整理したい。 根本にあるのは日本ハムの明確な公認野球規則への違反だった。スポーツはルールで成り立っている。そのルールで決められた規定に反する球場を作り、公式戦で使おうとしたのだから問題は大きい。ここをすっ飛ばして、いきなり球場の規定への疑義や、ファンサービスに問題を転嫁するのはあまり論理的ではない
――渡辺名人が欧州サッカーを見るようになったきっかけは? 渡辺 2011-2012シーズンからですね。ちょうど息子が小学校のサッカー部に入って、ルールもよくわからないような状態だったので、テレビを見せるのが一番手っ取り早いだろうということで。それまでは僕自身も、日本代表戦をやっていれば見るような、一番ライトな層だったんです。香川真司選手が所属していたマンチェスター・ユナイテッドを見るようになって、すっかり欧州サッカーを視聴することがルーティン化していきました。 ――4級審判の資格も取得したそうですね。 渡辺 小学生の試合では“お父さん審判”の需要があるんですよ。取得したら、毎年、FIFAの日本語版ルールブックが送られてきて。それを読むのが楽しかった。サッカーは将棋と違って、わりと頻繁にルールが変わる競技です。キックオフ時にボールを前に蹴りださなくてもOKになったり、ゴールキックをペナルティ
7月16日(日本時間、以下同)にアメリカ・オレゴンで開幕した世界陸上選手権は、25日、大会最終日を迎えた。 大会ではフィールド&トラックなどでの選手たちの活躍に加え、開幕前から注目されるニュースがあった。これまで大会のメインキャスターを務めてきた織田裕二と中井美穂がオレゴン大会をもって卒業する、つまり最後の大会になることが発表されていたことだ。 2人が初めてキャスターに就いたのは1997年のアテネ大会だから、13大会連続、25年にわたり務めてきたことになる。とりわけ織田の存在は、「世界陸上といえば織田」と言えるくらい浸透し、結びついていただけに、最後となることは反響を呼んだ。 テンションが高すぎる…就任当初は批判も多かった 1991年の『東京ラブストーリー』で一気に人気を高め、1993年の『振り返れば奴がいる』も話題となった織田は1997年、代表作の1つと言える『踊る大捜査線』に主演。時代
Number最新号「新しい金メダリストのつくり方」では、堀米雄斗を筆頭に東京五輪で金メダルを獲得したスケートボーダーたちを大特集。パークとストリートの種目で初代女王に輝いた四十住さくらと西矢椛をインタビューし、彼女たちにゆかりあるスケートパークを取材したフォトグラファーの近藤篤氏が実感した、国内のリアルなスケボー事情とは? かくいう僕もその一人だった。 別にスケボーを子供の遊びだと思ってはいなかったし、他のスポーツと比べて下に見ていたわけでもない。公園や歩道で夜遅くまで滑り倒すスケーターたちに敵愾心を抱いたこともない(若者に偉そうに言えるほどちゃんとルールを守って生きてきたわけじゃないから)。 でも、スケボーとオリンピックという組み合わせはなんだかしっくりこなかった。 陸上だってある、体操だってある、サッカーだって、アーチェリーだって重量挙げだってある、なのになんで今更スケボーが必要なんだ
15シーズンのうち、14シーズンでパ・リーグが勝ち越している。それだけではない。15シーズンを5シーズン刻みで見て行くと以下の通りだ。 2005年~2009年 パ427勝/セ418勝/19分 勝率パ.505 2010年~2014年 パ377勝/セ312勝/31分 勝率パ.547 2015年~2019年 パ294勝/セ236勝/10分 勝率パ.555 5年単位で、パ・リーグがセ・リーグをじりじりと引き離しつつあるのだ。 ソフトバンクは2勝1敗を上回るペース ここ5年間の勝敗を球団別に見ていこう。 <パ・リーグ> ソフトバンク59勝28敗3分 率.678 西武49勝38敗3分 率.563 日本ハム47勝41敗2分 率.534 ロッテ47勝43敗0分 率.522 楽天47勝43敗0分 率.522 オリックス45勝43敗2分 率.511 <セ・リーグ> 広島44勝44敗2分 率.500 巨人41勝
プロ野球12球団は3月18日、オンラインで臨時の実行委員会を開き、今月26日に開幕するペナントレースは、延長戦を行わず9回で打ち切りとする方針を固めた。 首都圏1都3県の緊急事態宣言は3月21日で解除されるが、飲食店などの営業時間の短縮要請は従来の午後8時から午後9時までとなった。これを受けて、プロ野球でも午後9時までに試合を終えられるようにするために9回打ち切りを決めたのだ。また試合開始時間も15分から30分程度繰り上げて17時45分プレイボールとなった。 これによって「引き分け」が急増することが予想される。 イチローのラストゲームは長時間だった もともと野球は「引き分け」を想定しない競技だった。9回で同点の場合は、決着がつくまで延長戦をするのがスタンダードな考え。MLBでは消化試合などでごくまれに両軍の合意によって「引き分け」になることがあるが、今でも原則として時間制限なしに延長戦を行
1925(大正14)年1月6日、6回目となる箱根駅伝の往路で、ある事件が起きた。 このとき、日本大学の第2区の走者だった前田喜太平は、区間賞の快走で、日大を8位から6位に引き上げて戸塚の中継所に飛び込んだ。しかしそこで待っていた3区の走者は、予定された吉田正雄ではなかった。前田は狐につままれたような気持ちを抱きながらも、とにかくその走者に襷を渡す。 この走者が予想外の活躍を見せる。先を走っていた明治大学、慶應義塾大学、日本歯科医専、東京高等師範学校をごぼう抜きし、日大は一気に6位から2位へとのし上がった。戸塚では先頭の中央大学に7分半近く差があったのが、平塚の中継所で4区の走者・会川源三に襷を渡すまでに2分ほどに縮めていた。しかし、会川は、「選手が来たぞ! 日大だ」と観衆が叫ぶのを聞いても信じなかったという。その上、走って来たのは顔も見たこともない男だった。会川は驚きながらも、仕方がないの
日本シリーズについて「全てにおいて、われわれは劣っていた」と語った原辰徳監督。巨人はDH制の導入に前向きだが…… セ・リーグの来季の指名打者制度導入がなくなった。 セ・リーグは12月14日に理事会を開催。席上、巨人・山口寿一オーナー(読売新聞グループ本社代表取締役社長)が文書を提出し、来季の指名打者制度の暫定導入を提案した。しかし、この提案に他球団はこぞって反対し、来季導入は事実上の見送りとなった。 「今の段階では来季、(指名打者制度を)入れるのは止めましょうという感じです。セ・リーグを強くすることについては、永続的に考えていかないといけないというまとめ方です」 理事会後にこう語ったのは阪神の谷本修球団本部長だった。 巨人の提案は全く相手にされなかった 新型コロナウイルスの蔓延に収束の気配が見えないばかりか、むしろ拡大の様相を見せる中での理事会。すでに発表された2021年の日程では3月26
ソフトバンクの日本シリーズ2年連続4連勝で幕を閉じた2020年のプロ野球だが、“これまでのプロ野球”と同じで人気は保てるのか? 記録とNPBの構造という2つの視点からの提言(全2回の2回目/#1はこちら)。 今年の日本シリーズのソフトバンクの対巨人4連勝は、プロ野球全体に大きな衝撃を与えた。中には「1リーグ制にすべき」など、球界再編を示唆する意見さえ出てきている。実は筆者も、現状のリーグの在り方を変えるべきではないかと思っている1人である。 とはいえ、今挙がっている単純な1リーグ制には賛成できない。 韓国プロ野球(KBO)は、10球団による1リーグ制で、ポストシーズンはペナントレースの5位以上のチームによってプレーオフワイルドカード、準プレーオフ、プレーオフが争われ、最後は優勝チームとプレーオフの勝者が韓国シリーズで対戦する。この方式だと、ペナントレースの勝率が4割台の5位のチームがチャン
近年の甲子園は、膨大な練習と膨大な食事を吸収できた"ガタイ”がいい選手が多い。しかし、もっと無理なく成長することができるとしたら……。 新型コロナウイルスはなかなか収束を見せないが、スポーツ界は徐々に活動が再開され始めた。プロ野球・Jリーグの2大プロスポーツが先駆けとなり、アマチュアスポーツも少しずつ活気を取り戻しつつある。 野球界も「withコロナ」の生活様式を進めている。プロ野球の取材をしていても、変化を如実に感じる場面がある。 プロ野球のパ・リーグを2連覇している西武は、ホームでの同一カード6連戦の最後の日、試合前のシートノックを行わなかった。またパ・リーグの首位・楽天は、中軸を担う3選手、浅村栄斗、ブラッシュ、ロメロの負担を休養日やDH起用で軽減しながら、チームをうまく循環させている。 そして彼らは、試合でハイパフォーマンスを発揮している。チームが好調なのもうなずける。 この流れは
大差のついた最終回、仲間たちがみんな立ち上がり、身を乗り出して声をからしている中で、佐々木朗希はひとりベンチ奥に腰を下ろしたままじっとグラウンドを見つめていた。胸に何が去来していたのか。エースであり、4番打者の彼は甲子園をかけた決勝戦という舞台に立つことのないまま、最後の夏を終えた。 ゲーム直後、すぐに敗れた大船渡ベンチ前で国保陽平監督がメディアに囲まれた。異例の光景である。矢継ぎ早に質問が飛ぶ。 なぜ、佐々木を投げさせなかったのか。 「故障を防ぐためです。連投で、暑いこともあって。投げたら壊れる、投げても壊れないというのは未来なので知ることはできないんですけど、勝てば甲子園という素晴らしい舞台が待っているのはわかっていたんですけど、決勝という重圧のかかる場面で、3年間の中で一番壊れる可能性が高いのかなと思いました。投げなさいと言ったら投げたと思うのですが、私には決断できませんでした」 前
1980年代(私が10代の頃)、常々思っていたことがあった。『野球選手はスポーツ選手ではない』という持論である。 野球選手は野球選手であり、他のスポーツ選手やアスリートと同じカテゴリーに入れるのはお互いに不幸だと思ったのだ。もっと言うなら野球選手に失礼ではないかと。 野球選手はたばこを吸い、酒を浴びるように飲み、肉をたらふく食らい、おねえちゃんに夢中。男の中でもかなり男血糖値が高い人々が集結した世界に見えた。それぐらいの人物だからこそ、当時運動神経が優れた男はまずやったであろう野球でもトップになり得たのだと考えていた。 今でも忘れられないシーンがある。1986年の「NHK特集」で「清原と桑田~18歳の大物ルーキー~」という密着ドキュメントが放送された。野球少年の私は食い入るように見たが、球界を代表するエース山田久志が清原を語っていた。その状況が印象的だった。 山田久志はホテルの一室で紫煙を
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