オーストラリアのウーロンゴン大学の教授で国際テロの専門家として知られるアダム・ドルニック教授が、2015年1月13日付けの国際政治誌「フォーリン・アフェアーズ」のオンライン版に、「身代金に関する4つの誤謬」と題する論文を寄稿している。テロリストによる人質問題と身代金に関する一考察として注目に値すると思われるので、ここで簡単に紹介したい。 人質解放交渉などに関わった経験を持つドルニック教授は、「政府は身代金を支払ってでも自国民の人質を助け出さなければならない」と主張する。そして、人質事件における身代金の位置づけや「テロには屈しない(no concessions)」政策の持つ意味については、大きな誤解があるとして、その中でも代表的な4つの誤謬を紹介している。 まず最初の誤謬として「テロには屈しない」(no concessions)(=身代金は払わない)を掲げる政府が、一切の交渉をしていないと考