幻冬舎新書 2010年5月 日本文化論が好きな人間なので、その手の本を相当数もっている。この本は日本文化論をなで切りにした本だろうと思い、自分の感想と比較してみると面白いかなと思って買ってきた。しかし、必ずしもそのような本ではなく、文化比較方法論のような部分もあり、人文科学方法論のような部分もあるということで、個々の本の批評もあるが原理論的な部分もある本であると思った。 その理論的部分はかなりカール・ポパーに負っているように読めたので、ポパー信者でもあるわたくしとしては、この本を読んだ機会に、昔、読んだ日本文化論関係の本を少し読み返してみるとともに、ポパーについても考えてみたい。 もしも、ある国の文化が独自のものであると言おうとするならば、他国とのきちんとした比較が必要とされる。しかし、多くの日本文化論は、その点できわめて杜撰である。日本文化論といわれるものの大半は、比較の対象を西洋だけに