●ブリジストン美術館にはセザンヌの自画像がある(「サントヴィクトワール山」もあるはずなのだが、どこかに貸し出されているためなのか、なかった)。この絵が目の端にでもチラッと映ると、あっ、セザンヌがいる、と思って緊張する。近付いてゆくと、セザンヌがこっちを見てる、と思ってさらに緊張する。自分は、セザンヌのこの視線に値する存在なのか。この、セザンヌの自画像の前に立って恥ずかしくないことをちゃんとしているのか、と。セザンヌに対する約束をちゃんと実行しようと努力しているのか、と思って、気後れしてしまう。身が引き締まる、とか言えればいいのだが、どこか後ろめたいところがあるのか、気後れする、という感じが強い。 ブリジストン美術館を観ていると、やはり「絵画」という何かがあるのだという思いが強くなる。それはジャンルということとはちょっと違う。それは長いこと受け継がれてきた約束のようなものであり、その約束はあ