東日本大震災直後、「啓開」という耳慣れない言葉がよく使われた。これは、応急復旧に先立ち、緊急に救援ルートを確保すること。国土交通省は道路の啓開を「くしの歯作戦」と名付け、地震発生から4日間で15の救援ルートを確保した。 東北地方の沿岸部を通る国道45号が津波で寸断され、多くの地区が孤立した。それらの地区への救援ルートをいち早く確保するのが、道路の啓開の目的だ。 内陸側には国道4号が通り、沿岸部の市街地との間をいくつもの道路が東西に結んでいる。啓開では、この東西に延びる道路を「くしの歯」に見立て、内陸部から沿岸部に到達するルートの確保を目指した。 国土交通省東北地方整備局の本局でくしの歯作戦を担当したのが、道路部の林崎吉克道路調査官だ。「揺れが長かったので、直感的に『これは宮城県沖地震だ』と思った」と林崎調査官は振り返る。 災害対応の担当者らは即座に、庁舎内の災害対策室に集まった。この部屋に