テンヌキって何ですか―― ス『天抜きっていうのは、天ぷら蕎麦から蕎麦を取ったものの事』 コ『それじゃ、天ぷらじゃないですか』 ス『違うよ君。天ぷらはね、皿に盛った天ぷらを天つゆに付けて、からっとしたのを食べるの。天抜きはねぇ、丼に甘辛い蕎麦つゆがたっぷり入っていて、そこに天ぷらが浮いてるの。この味は蕎麦屋の天ぷらでなければ味わえないよ。あの甘辛いつゆをたっぷり吸ったぐずぐずになった衣、あれが酒に合うんだなぁ。まさに江戸の味だよ』 藤山新太郎著 東京堂出版「そもそもプロマジシャンというものは」江戸の味かぁ、美味しそうだなぁ。ふと本から顔を上げると、自分でも意外なほどに、いかにも間抜けそうな声が出た。 今から10年ほど前の話だ―― 僕は元々九州のど田舎の生まれだ。山の中の限界集落と言ってよいようなところで、それほど高くない山の麓から頂上に伸びる1本の道に沿ってポツポツと家が建っている。まともに
![憧れの天抜き(天ぬき)|キタニケンイチ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/332b6fb0acb29e772552e6681c8fdb233871adb1/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fassets.st-note.com%2Fproduction%2Fuploads%2Fimages%2F77056148%2Frectangle_large_type_2_543608395c4ccf60abe8d076de2c8c2b.jpeg%3Ffit%3Dbounds%26quality%3D85%26width%3D1280)