著: 佐伯享介 たくさんの「便利ですね」をもらった2年間 「駅の近くに住んでいます」と言うと、「それは便利ですね」と言われる。「それは大変ですね」「さぞご不便でしょう」などと言われたことはなかったと思う。駅の近くに住むことには、とても価値があるのだろう。下落合に住んでいた2年間に、私はたくさんの「便利ですね」を受け取った。 数年前、西武新宿線下落合駅のホーム真裏にある、築50年ほどの古いマンションに住んでいた。 私の部屋は2階だった。電車を待っている人たちのちょうど頭の上あたりに、部屋の窓があった。窓から駅のホームまでの距離は、約1メートル。すこし、近すぎた。引越したその日に、防音カーテンを買ってきて、窓にかけた。 例えば停車中の電車の窓からぼんやり風景を眺める誰かが、たまたま視界に入った古い建物の窓にかけられたカーテンを見つけて、「ここにも生活があるのだな」と他人ごととしてうなずいて思い
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