新型コロナウイルスの感染が広がる前から、日本の病床数は世界一だという。にもかかわらず、感染の第3波では、自宅で亡くなるケースなどが相次ぎ「医療崩壊」と指摘された。世界一なのに、なんとも理解しがたい現実ではないか。医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之さんに背景を尋ねると、「医療サービスの機動性が不足している」と分析する。「機動性」とは何だろうか。【上東麻子/統合デジタル取材センター】 医療崩壊の原因は医師不足ではない? ――そもそも、日本の病床数の現状はどうなっているのでしょう。 ◆コロナ以前から、日本は世界一病床数が多い国です。人口1000人あたりの病床数は13・0で、これは米国の2・9、英国の2・5の約4~5倍にあたります。新型コロナ肺炎の患者に対応する「急性期病床数」についても、経済協力開発機構(OECD)諸国の中では最も多いのです。人口1000人あたり7・8で、OECD平均の3・7