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ブックマーク / med-legend.com (24)

  • 医学都市伝説 | 神は年金加入を許さない

    32才になるA子が私の外来を初診したのは、もう20年近く昔のことである。彼女は診察室で下を向いたまま、長らく逡巡している様子だったが、やがて意を決したかのようにこういった。 「私、もう夢も希望もないんです。どうしていいのか判らないんです」。かなりしっかりした口調でそう語ると、また口をつぐんで下を向く。まあこういうことはよくあるので、こちらも見当外れの促しなどをせずに観察を続ける。 彼女は全く化粧気がなく、あえて地味さを強調するような衣服に身を包んでいた。整った顔立ちからはそれなりの教養と利発さ、意志の強さが窺える。困惑を口にするものの、悲嘆に暮れているという印象はない。むしろ自分の訴えが理解されるかどうか、自信が持てないのであろう。 そこで、「どういったことに希望を持てないんですか?」と質問を向ける。彼女はちょっと間を置き、「私、滅びるしかないんです」、と答えた。「滅びる?肉体的に、という

  • 医学都市伝説: 男は黙ってポトラッチ

    2005年07月28日  男は黙ってポトラッチ [医学・科学関連] 英国王立協会が発行している" Proceedings: Biological Sciences"に投稿され、現在発刊準備中の論文"Costly but worthless gifts facilitate courtship"(高く付くが価値のない贈り物は求愛を成功させる)より。著者たちはロンドン大学の生命科学および実験生物学研究所数学物理センターの研究者たち。抜粋しか読めないが全部読めてもゲーム理論を用いた数学的考察なので、どうせ肝心の所はよくわかりませんが。 --------- 求愛時に適切な贈り物とはなんであろうか。我々はこの疑問に対して、求愛を連続したゲームとして捉えることで考察した。この過程は次のように整理できる。①男性が女性に贈り物をする。②女性はその中身を確かめた後、それを受け入れるかどうかを決定する。③女

  • http://med-legend.com/mt/archives/2007/09/post-1158.html

  • 医学都市伝説: 黒人専用心不全治療薬Bidilの謎

    Scientific American8月号に、「薬瓶の中の人種"Race in a Bottle"」と題された記事が掲載された。著者は遺伝子治療に伴う法的問題の専門家、ハムライン大学法学部準教授、ジョナサン・カーン氏である。Link> その記事は、2年前にアメリカ品医薬品局(FDA)が認可した、世界初の適応人種に制限がある心不全治療薬、BiDil(バイディル)を主題にしていた。BiDilが認可されたとき、日ではもっぱら、テイラーメイド治療の展開というような文脈で紹介され、それに伴う論争までは伝えられなかったようだ。 BiDilについて簡単に説明すると、それは1980年代頃に、それ以前の利尿剤+ジギタリスという古典的心不全治療より有効だとされ、使用が推奨された二種類の血管拡張剤(硝酸ソルバイドとヒドララジン)を合剤にしたものである。今も硝酸ソルバイドは冠不全が合併する場合、他の治療薬と

  • 医学都市伝説: YouTubeで組織病理学

    約544にのぼる、解説入り組織病理学標映像が、今年の2月以降Youtubeにアップされている。 投稿者は、WashingtonDeceitというHNの病理学者。シカゴにあるロザリンドフランクリン大学で病理学を指導している、ジョン・ミナシック博士とのこと。 学生たちのために、自分のページでカリキュラム案内や試験の予定を公開してくれていたり(しかもパワーポイント画像つきで)、なかなか親切な先生であるようだ。 学生たちを「給料を払ってくれる私のボスたち」と呼ぶところなども、人柄のよさというか、商売上手さが知れて、好感度は更に高まる一方。 組織病理学は医学生が基礎医学から臨床に進んでいく時、散々勉強させられる学問で、来る日も来る日も顕微鏡を覗いては、スケッチばっかりさせられた日のことを、今でもそう懐かしくもなく思い出す。あれ、長いことやっていたら、なんか目が寄ってきて妙な具合になってしまうんです

  • 医学都市伝説: ルシファー効果

    スタンフォード監獄実験という心理学実験について、聞いたことがある方は数多いであろう。1971年夏、スタンフォード大学心理学教室のフィリップ・ジンバルドによって計画され、予想以上の問題点を露呈して予定日程なかばで中止された実験である。Wikipediaにその詳細がアップされているので、興味ある方は参照して頂きたい。 この実験が意図していたのは、人間の残虐性というものが個別的な性質によるものなのか、社会的な役割によって導かれるものなのかを確かめることであった。実験は、ボランティアから、性格や行動上の偏倚が少ないと判断された被験者21名を、ランダムに囚人10人と看守11人に振り分け、2週間の予定でその行動を観察した。 彼らは大学の地下室にしつらえられた「監獄」に送られ、囚人役、看守役それぞれに対し、いかにもそれらしいコスチュームや行動原則が割り振られたのだが、実験開始直後から、当初の設定を超えて

  • 医学都市伝説: DSM-IV Tシャツ

    せっかく付けられた精神疾患診断名なんだから、思いっきりそれを楽しんじゃおうね、と言うコンセプトのデザインTシャツ。DSM-IV基準の精神疾患診断名とそのコードを大胆にロゴ化し、それにちょっとしたコメントまで付けて世にアピールするというもの。 今のところ、製品には「314.00 注意欠陥障害」、「314.01 注意欠陥多動性障害」、「312.82 行為障害」、「297.1 妄想性障害」、「301.5 演技性人格障害」、「301.81 自己愛性人格障害」、「300.3 強迫性障害」、「313.81 反抗挑戦性障害」、「301.0 妄想性人格障害」、「312.39 抜毛症」の10種類が揃えられている。なお、数字はDSM-IVコード。こんな風にお遊びに使うのが、この基準に一番ふさわしい使い方、というところですか。 これだけしかないのに、301.0を妄想性障害とする間違いが含まれているのがお茶目なが

    bhikkhu
    bhikkhu 2007/02/10
    うはw
  • 医学都市伝説: ヒーローは人間だけではない

    2006年09月24日  ヒーローは人間だけではない [都市伝説・デマ・トンデモ] ジェームズ・クレーンはWTC北棟101階で働いていた。彼は全盲で、デイジーというゴールデン・レトリバーの盲導犬を連れていた。あの9/11当日、旅客機が20階下を直撃し、彼はこれで終りだと思い、デイジーだけは助けようと、そのハーネスを外し、彼女を自由にした。デイジーは照明が消えたビルの中を駆けていった。ジェット燃料の臭いと煙にむせびながら、ジェームスは最後の時を覚悟していた。ところが30分後、デイジーが戻ってきて、彼を112階に連れていった。 デイジーはビルの中を走り回り、ジェームズ、ジェームズの上司、その他300人もの人々を導いて、炎上するビルから脱出させた。彼女はまだ多くの人がビルに閉じこめられているのを知っているのか、ジェームズが止めようとするのも聴かず、再びビルの中に飛び込んでいった。 この二度目の挑

  • 医学都市伝説: 暗いところで本を読んでも目は悪くならない

    2006年07月04日  暗いところでを読んでも目は悪くならない [医学・科学関連, ニュース] ニューヨーク・タイムズ健康欄記事より(閲覧には登録が必要)。 夜中に懐中電灯でを読んだ経験のある人なら、誰でも暗いところで字を読むのは目に悪いと注意された経験があるはずだ。そんなことをしていたら目を悪くする。視力が落ちるよと。 しかし大方の眼科医によると、暗いところで読書すると目の緊張を高めて頭痛の原因にこそなれ、持続的なダメージを与えることはないという。ほとんどの人は加齢と共に視力が落ちる傾向にあるが、遺伝学的研究によれば、どのように低下していくかを決定するのは家族歴であるとのことだ。 それでも一部の研究者は、子供の頃から目に負担をかけ続けることに警鐘を鳴らしている。暗いところでを読むだけでなく、長時間の読書を続けるだけでも、人生後半の視力低下を引き起こすというのだ。 例えば、米国やそ

  • 医学都市伝説: 抗てんかん薬による絶対音感の変化

    2006年06月28日  抗てんかん薬による絶対音感の変化 [医学・科学関連] 他の医療機関で治療を受けていた、てんかん発作の患者さんが、症状コントロールがうまくいかないとのことで私の外来を訪れた。発作が起こるようになって約3年になり、定型的な薬物治療で当初はかなり症状は押さえ込まれていたのだが、ここ3ヶ月ほど前から発作が頻発するようになったとのこと。 てんかん発作の治療というのは、基的には薬物の選択と量の調整がすべてで、効果的な薬が開発された今では、脳外科や神経内科の守備範囲になりつつある。しかし中には精神症状が出る場合もあり、結局もつれた例は我々のところに回ってくることになる。我々の方は、普通のてんかん治療経験がどんどん減っているのだから、これはよく考えれば妙な話である。 この例はそういう経緯ではなく、てんかん発作そのもののコントロールを求めて転医してきたのだが、なにしろ私のてんかん

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  • 医学都市伝説: 民事裁判で殺人を認定

    2006年05月18日  民事裁判で殺人を認定 [ニュース] 読者からの質問メールに、今日の朝日新聞記事に関するものがあった。さる98年に死亡した男性の生命保険金の支払いを求める民事訴訟で、裁判官は受取人側が被保険者を薬物で死亡させたと認定し、原告敗訴としたという記事についてである。(ウェブ魚拓による記事のキャッシュ参照) そこで使われた薬物はサリチル酸化合物であったとされるのだが、朝日新聞記事には「市販のアスピリンなら、数十錠のむと致死的な量になる」と解説されていて、そんなもので人は死ぬのかというのが質問の中身。結論からいえば、「数十錠」のニュアンスの問題が多少あるものの、朝日の解説は間違いではない。アスピリンは30gもあれば人を死に至らしめることが可能で、要指示薬でもないため、誰でも処方箋なしに致死量を買うことが出来る。もっとも、この薬は吸収がかなり遅く、作用も飲んでコロリというような

    bhikkhu
    bhikkhu 2006/05/21
    ビクーリ
  • 医学都市伝説: 代替療法が商売敵?その2

    2006年04月29日  代替療法が商売敵?その2 [医学・科学関連] 昨日、精神科領域では代替療法と競合することはまずないと言ったのだが、何故そうなのかという自分の考えはあまり書かなかったので、その辺をちょっと追加したい。香山リカがいってるから、あえてそれに反発しているのだろうと思われるのもシャクなので。 精神科医療の特殊性に触れる前に、ちょっと考えて頂きたいのが、例えば交通事故で骨がポッキリとか、虫歯がひどくなって顔が腫れ上がっているというような状態で、あえて近代医療を選ばずに、拝み屋さんや霊媒師を選ぶ人がいるかということ。絶対いないはずだ。 多少一般的イメージとは違うかも知れないが、精神科医療の対象というのも、ほとんど外傷や急性疾患と同じようなもので、差し当たって具体的な対策を立てることが必要な状態なのである。例えば重症のうつ状態で、自殺念慮に捕われている人がいたとして、そこで必要な

  • 医学都市伝説: 代替療法が商売敵?

    2006年04月28日  代替療法が商売敵? [医学・科学関連] 掛け値なしに私の3倍以上働いておられるのは間違いないので、9to5医者としては申し訳なくて時々覗きにいくだけの「NATROMの日記」に、こんな記事があった。「はてな」の人力検索に、こういう質問が掲載されているというのである。 「知人が霊に憑依されて困っています。具体的な症状は、特定の複数の霊の声が聞こえて、知人を罵倒するそうです」というのがその内容である。「除霊したいと考えているようですが、信頼できる除霊士を知りません。信頼できる(確実に除霊できる)力のある霊能力者を教えてください」。なお、「なお精神科に行けというのは不可です」、なぜなら「現代医学では直せない状態で」、「病気ではないと断言」出来る状態なのだそうだ。 言うまでもなくこれは精神分裂病の症状で、この質問者の知人(NATROM氏が推測するように、この問題に悩んでいる

  • 三人寄れば文殊の知恵?

    2006年04月26日  三人寄れば文殊の知恵? [医学・科学関連] イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の心理学研究者による論文、「文字・数字置換パズル解決におけるグループ作業の優位性:成員数の効果について」"Groups Perform Better Than the Best Individuals on Letters-to-Numbers Problems: Effects of Group Size; ,Patrick Laughlin, Erin Hatch, Jonathan Silver, and Lee Boh, :Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 90, No. 4"(PDFによる全文はこちら)。 0から9までの数字を10の文字で置き換え、A+J=ED、E+E=D、E+D=A……という具合に計算式を示

  • 医学都市伝説: Don

    2006年04月10日  Don't think too much, It's allright. [医学・科学関連] ちょっと前に書きかけながら、論文を読みきれなくてほっぽり出しているうちに忘れてしまったネタ。「様々な要因が輻湊する案件を決断するときには、深く考えない方がいい結果が得られることが多い」という心理学論文の紹介である。私も自分の経験から全面的に同意するのだが、残念なことにいつも深く考えないので、深く考えるよりもいい結果が得られているかどうか自信がなかった。 元論文は年2月17日に発刊された"Science"誌に掲載された。抜粋だけをざっと抄訳してみる。 「一般的な常識とは異なり、物事の選択の際に熟考することは必ずしもいい結果をもたらすとはいえない。意識的、無意識的な思考にかんする今日の洞察に基づき、我々は「タオルを買うかオーブンミットを買うか」というような単純な選択に関して

    bhikkhu
    bhikkhu 2006/04/14
    ウェーバーだったっけな?雑事に追われているときに良いアイディアが出るとかいう話を思い出した。
  • 医学都市伝説: 物忘れ外来

    2006年04月07日  物忘れ外来 [医学・科学関連] 脳外科の医師の1人が開業のために退職したので、その人がやっていた「物忘れ外来」なるものを引き継ぐことになってしまった。こちらにしてみれば、いつも痴呆の疑いがある人は受け入れているのだから、とりたててそんな外来を標榜する必要などない。しかも、ほとんどの場合はマスコミなどに煽られてボケの予感に怯える人につけ込んだ阿漕な商売になり、あまり気分のいいものではないのである。 大体「物忘れ」と痴呆は全く別のもので、確かに後者は前者を含む場合が多いが、前者が後者の前兆とはいえない。もちろんそういう場合があるのは事実ながら、それを早めに見つけて何かいいことがあるかというと、何にもありはしないのである。薬屋さんにすれば、アリセプトみたいにクソ高い薬がドンドン消費されたら笑いが止まらないだろうが、それでどれほどのメリットがあるかというとかなり怪しい。

  • 医学都市伝説: JavaScript と CSSでカクマル化

    2006年03月15日  JavaScriptCSSでカクマル化 [ネタ] 全然来とは違うところで大受けしたのが、「Javascriptで指定のHTML要素を動的に角丸デザインにする方法」なる記事。 これをつかえばクロカンもまっつぁんもいらぬ、すべて一律にカクマル化が可能なんだと、しばし大笑い。早速、最適と思われるフレーズをカクマル化。しかしこれだけのためにCSSやヘッダーを書き換えるかね。 今日は当直なので、この一発ネタだけでおしまい。ナンのことかわからぬ人はスルーして置いてくださいな。 追記:「カドマル」とよむらしい。 さらに追記:アーカイブページにまでjavascript追加するのが面倒なので、CSSでカクマル化。IEではダメかも。 投稿者 webmaster : 2006年03月15日 19:05 トラックバック このエントリーのトラックバックURL: http://

  • 医学都市伝説: 早起き生活

    2006年03月12日  早起き生活 [医学・科学関連] XPアップデート作業でほとんど徹夜を強いられてしまい、これで寝てしまうと休みがパーになると、必死に起きていたおかげで、やたらに気分が高揚する日曜日である。ほとんどADHD風になっていた部屋をかたずけ、をちゃんと分類して棚にしまうだけで半日仕事だが、結構テキパキ作業が進むのが快感である。 こういう寝不足の気分高揚というのは誰でも経験することで、それを応用した(ホントはもう少し理論的裏付けがあるが)うつ病の断眠療法というのが存在するほどだ。これのやり方にはかなりのバリエーションがあるが、全く眠らない日を作る標準的な方法はやはり患者人にも周囲にも負担が多いので、かなり前からアドバイスしているのが「早起き」である。実に単純なことではあるが、ちゃんとした適応を考慮すれば、かなりの効果がある。 うつ病には元来、不眠や浅眠、早朝覚醒という睡

  • 医学都市伝説: EPAその後

    2006年03月05日  EPAその後 [医学・科学関連] 3年ちょっと前に、「魚・魚・魚、魚をべると分裂病が治る…か?」なんていうような記事を書いたことがあって、要は必須脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)が、分裂病圏の疾患にたいして効果があるのではないかという一部の意見へのつたない追試を始めたという話である。そのころ読んだ単行と関連文献に影響されたのが直接のきっかけだったのだが、もちろんそこに至るまでには私自身のそれなりの経験がその背後にはあった。 それは分裂病の病因仮説が、もっぱら偶然によって始まったドーパミン系遮断薬の治療効果によって組立られているということへの素朴な疑問がまず第一。その向精神薬使用によってかなりの頻度で引き起こされる患者たちの「肥満傾向」に対処してきた経験から、分裂病という病態の背後には何らかの栄養面での異常があるのではないかという誰でも思いつく着想が第