東京暮らしをするシックな佇まいの女性が、ラッカー仕上げのテーブルにティーカップを置くと、カフェの開け放たれた窓のほうを向き、7月の首都の美しさに感じ入っていた。 外の銀杏並木の葉は、豊かな夏の緑に色づいている。昼過ぎの日差しが上野公園に降り注いでいた。人の流れが向かうのは、日本で最も長い歴史を持つ国立の博物館だ。 「本当に、この都市が大好きなんです。でも、数ヵ月前から、近所を歩くときは、前と違う道を使うようになりました。路地を抜けたりしてね。 そういう道は、中国人たちもあまり使いませんから。最近は本当に中国人が多くなりました。どこへ行っても中国語が聞こえてきます。私はそんなのを求めて、中国を離れたのではないんです」 曹(ツァオ)という仮名で取材に応じてくれたこの女性は、以前はある企業の重役だった。1年半前、中国から子供たちを連れて東京で新生活を始めた。その頃は、中国人の多さもここまでではな

